2023年おさめ

 年をとって、ここ数年の記憶が平板化されているせいもあるだろうが、季節的な条件によっても時系列の感覚がかき乱されている。夏はもうどうにも手の届かないところにあるのに、前の冬はこの寒さのせいか手近なところにあるように感じる。こんな書き出しであっても、今年のことを振り返ると、おおむね二つのトピックしかなくて、内容に差し当たりはないのだけど。トピック1,博士号を取得、トピック2、数年ぶりに彼女ができて、それにまつわるあれこれ。この手の記事を書くときはいつもなら、筋道を大雑把にでも考えるところが、思い立ってえいやと書いているので、話がとっちらかりそうだ。

 まず博士号の取得。人文系博士号の取得を目指す人たちのための一つのサンプルとなる、まとまったエントリーを書いたほうがいいのかもしれないけど、それぞれが所属する大学の方針、指導教員の方針、本人の計画等があると思うので、本当にサンプルとして。私の所属していた大学、東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻相関社会科学コース、ここまで書くのは、大学の他の専行でどうなっているかわからないからであるが、博士課程では提出の前にプロポーザル、リサーチ、ファイナル、という三つのコロキアムが設けられており、記憶が確かならば、D2、D5、D7でこなした。そもそも5か年計画だったものの、結果からいえばそれは大失敗である。当初考えていた章立てからは大きく変わるものはなかったものの、D4あたりに、新しい物質主義をちゃんと調べて、そこでようやく全体をまとめる軸を思いつけた。それぞれの章を単体で書くこと自体は大変ではないだろうが、指導教員が「博論には博論の格がありますからね」というように、博論全体にふさわしいリサーチクエスチョンを立てたり、軸を発見したりすることが、何より大変だった。これが早くできれば、早く書き上げることに近づくのだろう。

 そのあとどうしていたかはあんまり思い出せないが、新しい物質主義関連を調べつつ、メインの章を作り上げていたように思う。結局、5か年計画の5年目までにできたのは、序章、終章を除いてメインの章である7章のうち、前半の3、4、5章ができていて、6章と7章のレジュメ的なものがある、それくらいだった。そのままD6でものすごい勢いで、先行研究や研究背景となる1、2章を書き上げ、そして残りの章を手掛けようとしたところで、夏となる。6年目で修了したい場合、私のコースでは遅くとも8月までには完成した原稿を用意していなければならなかった。これに失敗した原因は、梅雨明けの体調やら精神やらの不調にある。毎年そうなのだけれど、梅雨明けに体調を悪くし、くわえて執筆の追い込みの昼夜逆転が効いて、3,4時まで書く、遅く起きる、しかし夕方くらいまで眠くて動けない、そんなサイクルが体調不良と重なって、7月にほとんど進められなかった。何にしてもそうだろうけど、自分がどこで体調を崩す傾向があるのか、そしてそれをいかに予防するのか、ということが大事。

 見事、D6での修了を失敗して、ここからスケジュールがゆるくなる。D7の春学期修了に切り替え、夏に書き上げなければならなかった原稿が、2月締め切りとなり、のんびりと完成させ、ファイナルコロキアムを4月末に。そして、原稿を修正し、7月頭に大学に提出、9月頭に最終審査となった。最後のスケジュールの緩慢さあたりに、私のサンプルとしての外れ値感がある。

 ともあれまとめてみれば重要な点は次となる。まずこれがないとどうにもならないし、誰もが言うところではあるが、それぞれの章をまとめるリサーチクエスチョンや軸を発見すること。大学によっては、博論提出のために複数の刊行済み論文を課されることがあるが、私のところにはなかった。すべて書き下ろしというのは大変であり、一定程度あらかじめ手元にあるというほうが明らかに楽であるが、軸を発見してから書いた後半の章の道筋は比較的見えやすかった。それゆえ、発見が早ければ早いほうがいいといえるが、問題はこれをどう見出すのか、というほうだろう。果たして私がこれをどう成し遂げたのか記憶がないものの、ともかく、他人がどうこうというより、自分が心の底から面白いと思えるものを見つけようとしていた。

 次に、自分の傾向を知り、それに対策を立てること。私で言えば、夏場前に体調を崩しやすい、本を読んで原稿を投げ出してしまうこと、昼間はぐだぐだしてしまい日が暮れるころにならないと手をつけられないこと、などなどがある。これらの要因で、去年失敗したといっても過言ではない。みなさん、自分をよく知り、規律訓練しましょう。

 さてもう一つのトピック、彼女ができた。昨年のまとめでは、マッチングアプリをやり、などと書いていたが、そこまで時間を戻す必要がある。思い起こしてみると、心理的抵抗からマッチングアプリに慣れる期間が去年には設けられており、上記の緩慢なスケジュールが生まれたことから、さて本格的にやるぞ、と冬場になって始めたのであった。連絡を取り、会った一人と3か月くらい連絡をやり取りし続けて、結果としてそれは失敗に終わった。その一方で、Twitter経由で連絡を去年の12月に連絡をくれたのが、現在付き合っている彼女である。その後、一方ではマッチングアプリ経由の人と連絡を取りつつ、他方では現在の彼女となる人とも連絡を取り、ということを2月まで続けていた。ここの色々なやりとりのなか(その表面的な事柄はそのころの日記にあるので、そちらを参照)で、彼女となる人に傾いていき、めでたく付き合うこととなる。

 ここで面白かったことがあった。マッチングアプリ経由の人に一応、筋を通しておこうと「話したいことがあるのですけど」と連絡したところ、あちらからも同じ旨の返信があり、「彼氏ができたから連絡ができない」とのことであった。私のほうも「実は彼女が…」と切り出した。世界にすべての事柄こんなにも平穏無事に、丸く収まることがあるのか、と笑ってしまった。

 ここまで、それはまあ本当にてんやわんやがあったものの、特に書く気はない。ただ一つ書くべきことがあるとしたら、関連することとして宮沢小春についてだろう。付き合った当初、推しがいようと何も気にしないと言っていたのだが、3月頃に彼女の家にお邪魔して、そのことを日記に書き、さらに日記で彼女との出来事に並列するように、宮沢小春のことを書いたら、大意としてめちゃくちゃ嫌だと言われたことがあった。それなら、と私が半ば過剰に反応し、さっぱりと取りやめ、宮沢小春にまつわる去年からの騒動が思わぬ幕引きとなる。今年に入って、さらに推しに関する議論は白熱しており、私も取りこぼした疑問が多々あったけれど、そんな幕引きで私は全く答えを出していないし、出す必要もなくなった。

 彼女は、自身の性質としてメンヘラではなくヤンデレだ、と言っており、私のこの関係に置かれた状態は、ストックホルム症候群のようではないか、と思うこともたまにあったが、まあそれでもいいか、と開き直っている。私自身がやるべきことは措いといて、重要なことは当然他の人が評価するような何かではなく、彼女の論理であって、それにただ向き合うこと、つまり私がそれをどのような論理に従って、理解し、応答するか、である。これが条件なのであって、そのなかで私の領土やルールを作ること、そして私たちだけのルールを作ること、それが自由であって、楽しい。

 別にここまでが序章であった、というわけではなく、ルールを作ること、それが自由であって、そして美的なものでもある、という点で私の傍にあった曲を思い出し続けていた。前から気づいていたのだろうけど、PtMだけではなく、どの門田楽曲でもこの点を示し続けていたのだ、と再確認していた。

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 それと同時に、今振り返ってみると、「でも、君は許してくれたから 嬉しかった」という歌詞はあまりにナイーブで簡単に受け入れることはできないけれど、「僕はいつも祈っている そして幸せになる 世界中のレイプ犯と同じ身体の仕組みで」という歌詞はその通りで、本当にまさにそうだ、としか言いようがない。重なりの耐え難さと私自身のあいだを行ったり来たりしていた。これに限ったことではないが、一般的に存在する、憎くて、避けたいコード、例えば、「彼氏」と「彼女」という言葉に「男性」と「女性」が割り振られ、機能するコードを取り上げてみても、それらに縛られたり、換骨奪胎したりもしていたように思う。

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 連想的に書いていたら、着地点を見失ってしまったし、くわえてもっと書いてもいいと思えるようなことがあった気がしたことも忘れてしまった。

 日記を書いていたら、誰かに声をかけてもらえるかもしれないので、出会いに困っている人は、日記を書きましょう。以上。

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2022年良かった音楽

 おばんです。みんな恒例、2022年良かった音楽をやりました。

 毎年書くたびに書いているけれど、おそらく来年の夏とかにベストを作ろうと思えば全く違うものができると予想される。私の2022年の良かった音楽は、寒い暮れの夜中に友達と延々と電話しながら、という状況に拘束されて生まれたものです。そのせいか、メロウなものが多い。

 以下では特に順位付けするわけではなく、アルファベット順で。コメントを付けられそうなものにつけていく。ないからと言って悪いわけではない。

 

・Adolfo Lothar/Adolfo Lothar

adolfolothar.bandcamp.com

・Antonio Loureiro & Rafael Martini/Ressonancia

antonioloureiromusic.bandcamp.com

 今年めでたいことに彼らの来日公演を見られた。これを二人でまんま演奏していて、本当にどうかしていた。

・Arthur Nogueira/Arthur Nogueira

arthurvalentenogueira.bandcamp.com

・Bala Desejo/ SIM SIM SIM

baladesejo.bandcamp.com

 今年の前半に見つけて、当時はEPとして一枚ずつリリースされ、その後合算版がリリースされていた。その後ディスクユニオンがリリースすることになり、人気のようで何か先見の明があった。

・Bruno Berle/No Reino Dos Afetos

bruno-berle.bandcamp.com

 テープ集的な具合でぼんやりとした音像が心地よい。

・Carlos Aguirre/Va Siendo Tiempo

carlosaguirre.bandcamp.com

・Caroline Loveglow/Strawberry

carolineloveglow.bandcamp.com

 まんまCocteau Twins

・Delfina Mancardo/OCYANTE

delfinamancardo.bandcamp.com

・downt/SAKANA e.p.

ungulatestokyo.bandcamp.com

・Eric Henaux/Say Laura

ericchenaux.bandcamp.com

・Erny Belle/Venus Is Home

ernybelle.bandcamp.com

・Federico Arreseygor/Jardineria para Principiantes

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・Feir/Feir

wearefeir.bandcamp.com

 シューゲイズギターポップでこれしかまだリリースされていないが、これからが楽しみ。

・Grazer/Melancholics Anonymous

grazer2.bandcamp.com

・Gustavo Infante/Passaros

gustavoinfante.bandcamp.com

・Jackson Mico Milas/Blu Terra

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・Juan Fermin Feraris/Jogo

juanferminferraris.bandcamp.com

・kelz/5am and I Can't Sleep

kelzmusic.bandcamp.com

・Khaki/頭痛

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 名前は知っていたけれど、これで初めてちゃんと聞いた。私は懐かしさで音楽を聞いてしまうところが多々あり、それでもこれは2010年くらいの音を想起させると同時に、その延長線上にあるものを見せてくれて良かった。

・kurayamisaka/kimi wo omotte ru

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 こちらも同様に。

・laura day romance/roman candles

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 アルバムが滅茶苦茶良いというわけではないけれど、散歩しながら聞くには本当に最適であった。

・Leonard Marques/FLEA MARKET MUSIC

180g-leonardomarques.bandcamp.com

・Manuel Linhares/Suspenso

manuellinhares.bandcamp.com

・Marta Arpini/I Am a Gem

martaarpini.bandcamp.com

・Meyru/Slow Up

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・Moons/Best Keep Secret

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・Parannoul/White Ceiling/Black Dots Wandering Around

parannoul.bandcamp.com

・Rafael Martini/Martero

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・Sebastian Macchi/Melodia baldia

sebastianmacchi1.bandcamp.com

・Shelby Trapid/Everything I could not fix I broke into smaller pieces

shelbytrapid.bandcamp.com

・Shirley Hurt/Shirley Hurt

shirleyhurt.bandcamp.com

・simsiis/white hot

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 おそらくこれを今年一番聞いていたと言っても過言ではない。活動休止してしまい残念。

・Tim Bernandes/Mil Coisas Ivisiveis

timbernardes.bandcamp.com

・Tomas Verdes/Recordatorio

lacreurecords.bandcamp.com

・Ululu/Ululu

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 Ululuそれ自体はこれ以前から知っており、待ちわびていたフルアルバムがNew Folkから出ていた。これまでのEPのほうがもう少し荒い録音で、ガレージ感があり、そのほうが良かった気もするが。

・Victoria Victoria/To The Wayside

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・Winter/What Kind of Blue Are You?

daydreamingwinter.bandcamp.com

・Young Prisms/Drifter

youngprisms.bandcamp.com

・榎本夕食/雨の庭/忘れる幽霊

yushokuenomoto.bandcamp.com

yushokuenomoto.bandcamp.com

 上のシングルから知ることとなったが、2年前にリリースされていた下のアルバムもとても良い。今後が楽しみ。

・田中ヤコブ/IN NEUTRAL

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 リリースされたばかりで、聞いていたら中村一義を初めて聞いたときのことを思い出した。これから聞くにつれて、どんどん味がでてくるのだろう。

・浮/あかるいくらい

sweetdreamspress.bandcamp.com

・牧野ヨシ/GOOD FISHING

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・家主/INTO THE DOOM

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 やっぱり家主と田中ヤコブが好きだが、ライブに行けていないので2023年はどこかで見たい。

・畑下マユ/ちるちるみちる

mayuhatashita.bandcamp.com

 

 以上!

博士論文・宮沢小春・マッチングアプリ

 みなさま、おばんです。

 年末になったので、今年の取りまとめを書こうと思います。タイトルにした通り、2022年はこれに凝縮されている、と言ってよいものであった。三単語タイトルでお馴染みのローティの『偶然性・アイロニー・連帯』にほぼ重ねられるものであろうとも思っている。ローティの著作では、偶然性を基礎として、アイロニーと連帯が導出されている。公私二元論という点において、私はローティアンではないが、概ね方向性を共有している。今年度中の提出を目指していた博士論文は、そのための提出期限にあえなく失敗することになったが、ニーチェフーコードゥルーズ、ジェイムズ、ホワイトヘッドらに依拠して議論を組み上げてきたウィリアム・コノリーについて論じるものであり、彼の議論の焦眉の一つは偶然性にあったと言ってよい。また研究をする人によって異なるところではあるが、私は研究内容と私自身の実存や信念、エートスを非常に近しいものと捉えており、存在論的な偶然性と主にニーチェフーコー的な自己の技芸を実践することが生活の基底をなしている。そのため、他の二つの要素である、宮沢小春とマッチングアプリそれ自体と博士論文のあいだには内的な繋がりはないものの、これらに関わることは、研究していることを必然的に通ることになる。以下で簡単に時系列的に振り返ることになるが、宮沢小春とマッチングアプリとのあいだには論理的な、というよりかは時系列的な繋がりがある。それは、宮沢小春を推しと見なすことで陥ってしまったある種のガチ恋的な心性に精神的な不健康さを不気味に思い、では、と心理的障壁を取り除いたり、いつの間にか取り除かれたりすることによって、いたったのがマッチングアプリだからである。これらもローティのタイトルに重ねられるように思われる。宮沢小春という推しへの接近は何か、ネットやファンダム文化で膾炙している批判や非難ではなく、良い話だけをしよう、肯定しようという言説に対して、アイロニーを徹底的に持ち込むことであり、それは同時に彼女やそうした言説を鏡にして、自身にもアイロニーを持ち込むことでもあった。またマッチングアプリはある種の連帯ともいえる。しかし、それはローティが目指したような連帯ではなく、資本主義と異性愛に貫徹されたものではあったが。

 さて、一応三つ並べてみたものの、博士論文は否応なくやらざるを得ないものであったため措いておくとして、特権的な地位を有していたのは宮沢小春だろう。そのため、彼女に即して振り返ることがおおむね2022年を振り返ることにも繋がる。そのために、時計の針を少し戻す必要があり、2021年の11月頃まで遡ろう。私は3月生まれということもあり、去年は20代最後の年であった。20代を総括してやろうと、東京ポッド許可局的に言えば、「忘れ得ぬ人」にお茶でもしましょうと連絡をするも、連絡が返ってこず、総括が失敗することとなる。そうしたぼんやりとした喪失感と並行して、アプリゲームとしてプレイしていたIDOLY PRIDEからリリースされていたアルバムを聞いていたところ、これが意外と良く、アニメやゲームをやっていたときには声優を気にしていたなかったものの、12月頃に声優をちょっと見てみようと思い、調べる。そして2022年へとかわるころに彼女に出会う、そう宮沢小春に。

 私のTwitterの過去のポストを遡ってみると、1/7に「宮沢小春さん、すごく顔が好きだったのでよしラジオにメールでも送ろうと思ったけど、なんだか8才も下の人にファンになることに自分の中の何かが歯止めをかけようとしている」というのがあった。なんだかんだ言いつつも、スタートラインが顔が好きかどうかなあたりが面白い。それはさておき、歯止めをかけることに失敗し、そのままずるずると引きずられていくこととなる。彼女が所属しているミュージックレインの三期生で行っている「ミュージックレイン3期生新番組β版」を視聴し、彼女のかわいさにぐったりするといういかにもなオタクな幸福感を覚えており、たぶん最もハッピーだった瞬間だっただろう。その後は、絶対に行くこともないと思っていた彼女が初めて出演する舞台や、4月からひと月半ごとに行われる三期生のイベントに今年はすべて通った。

 初速的なハッピーな時間はたいして長く続くこともなく、批判的に訝しんでいた時期のほうが長く、今もそうであるように思う。そもそも秋元康的なマッチポンプ的に構成された構造を嫌いだし、そうした露悪な構造がなくとも、多かれ少なかれ「女性」声優的な売り方がされることによって、演者らを構造的に非人間化・商品化していくような資本主義システムに対して批判的であったし、そして考えることをやめたかのように、水を差すな、肯定しようというネットの風潮も嫌いであった。端的に今年のことをまとめてしまえば、こうした複合物によって成り立っている彼女を取り巻く環境と私の感性や享楽との溝を確認し続けるだけであった。

 例えば、イベントを取り上げてみれば、基本的には演者がきゃーきゃーわいわい楽しいね、かわいいね、というのを見せるだけのものであり、表面的には笑えるものの、さーっと流れていき、比べることが望ましいかどうかはわからないが、好きなバンドのライブを観たり、本を読んだりしたほうが持続的な満足感や快楽を味わえた。そうした点で、私が感じる楽しさと提示される楽しさは非常に異なったものであり、まだマシな言い方をすれば、「あなたたちはベストなものを提供しているかもしれないけれど、私には合わない」というものであった。こうした溝は、今年確認し続けて最も悲しかったし、落ち込んだ点の一つ。おそらく私はこうしたものを楽しいと思える感性を人生のどこかで持ちえたはずだったが、それはどこかで否定的に切り落としてきたものであり、今そう思えるように規律訓練することは自分の感性をおそらく深刻な仕方で毀損することに繋がるということは容易に想像しえた。そうした切り離した過去が現在へと、急に顔を出してくる不気味な様と、おそらく埋まり得ない溝を直視することは非常に厳しいものであった。ローレン・バーラントが「残酷な楽観主義」というものを提起していたが、それにぴったりな状況ともいえる。ちゃんとした定義は省くが、私は宮沢小春を享受したいものの、そのためにはイベントなどを通らねばならず、イベントによって見せられる溝によってその享受が妨げられているという点で、残酷であり、同時にそれを離れられないという点で楽観的でもある。

 そうしてもう一つの問題がファンダム文化。推しなんてものができる前は、気味が悪いなと遠巻きに見ていればよかったけれども、まさか自分が巻き込まれることになろうとは思ってもいなかった。そもそも良いものと悪いもの、肯定的なものと否定的なものを截然と分けられると考えられる風潮と、ポストモダニズムずぶずぶの私が合うはずがない。そんなものを見つけたら、とりあえず崩してみるという習性があり、極めて相性が悪く、しかしそれをもし崩そうものなら、批判をするな、水を差すなと言われる始末。さて、宮沢小春は彼女の見た目から褒め言葉として、おしとやか、上品、お嬢様、大和撫子というのがよく挙げられる。これでもありふれてマシなほうで、「幸薄そうな顔で主張が弱そうで好き」というものまで見かけて非常にげんなりした。多くの人はそうしたありふれた言葉を褒め言葉、肯定的な言い方として用いているが、それを甚だしく疑問に思い続けてきた。それはあなたがた男性が理想とする女性像を投影しているだけであって、本当に望ましいのですか、と。肯定的なものを称揚しているにも関わらず、自分が投影している価値や基準に無関心で、規範的に望ましくない要素がしのばされていることに全く気付いていないあたりに、本当に呆れ、苛々していた。

 これらから鑑みるに、彼らが考えるところの否定的な態度を延々と抱き続け、一般的に言われるような「尊い」「生きててよかった」という感情を抱くことはほとんどなかった。そもそも後者の感情については、私の中に語彙としても存在していなかったけれど。宮沢小春にはまって、色々考えて悩んだ私は2月に、TBSラジオの生活は踊るの相談コーナーにメールを送り、パーソナリティであるジェーン・スーから次のような言葉をもらった。「地獄は楽しいぞ」、と。まあ番組のハッシュタグを見ていたら、考えすぎ、ただ楽しめばいいのに、気持ち悪いなどと散々なことを言われていたが。そうした点はさておき、「地獄」と形容された場所でなされること、それは自分の仄暗さを見つめ続けることであり、それとともに、自分が打ち立てたい価値と規範的価値、社会的な価値の三つを考量し、自己の技芸によって自己を組み替え続けることであったように思う。アップデートなんて言葉が膾炙するようになったがそんな便利で簡単なことではなく、ある性向がどこまで食い込んでいるのか、根深いものであるのか、そしてそれは変えられるのか、変えられないのか、変えられるとすれば他にも何を変えればいいのか、あるいは余波として変わってしまうものはなにか、こうした点を勘案しなければならず、そして重要な点として全ての性向が変更可能ではないという点である。ポストモダニズムへの批判として、全てを変更可能なものと見なしているという批判があるが、そうしたことを主張している人はほとんどおらず、むしろ変更に対して頑強に抵抗する諸要素、そしてそれに応答できないがために生じるルサンチマンニヒリズムに着目し続けてきた。そのため、地獄の歩き方と称して、ひたすら地道に何をどのように変えられるか、変えられないならばそれをどう受け止めるか、ということを繰り返していた。

 さて、これは今年会った人ないしは話した人によく聞かれることだけれども、そうやって私は批判ばかりをしているが、私自身の最初のきっかけとして顔があり、そもそも欲望の問題をどうしているのか、ということがある。まず一点目として顔について。現段階でルッキズムという問題を考える必要があるがそれは脇に置いたとして、彼女の顔を好きになったからといって、私が彼女の顔に何か言及しようとしたときに、彼らが使うような言葉を用いる必要がないこと。私が彼女の顔を好きだからといって、「おしとやかで上品な顔をしているから」という必要はない。面倒なときはとりあえず括弧に括っていわゆるという言い方をすればいい。第二に欲望について。この欲望といった時に何を意味するかは非常に幅はあるが、狭い性的な欲望から始めてみよう。推しとセックスしたいとか結婚したいとかいう人をまあまあ見かけることがあるが、私はそもそも挿入を頂点としたようなセックスを嫌悪しているところがあるし、それを抜きにした性交にしても特権視していない。また戸籍に結びついた婚姻制度も嫌いなのでない。もう少し性に関して緩く取ったときに、今年の11月ごろに彼女がミニスカートを履いた画像をあげていて、界隈が湧き上がっていてたが、私は服装として似合うねとしか思わなかった。ただ眼鏡姿をあげたときは、私は眼鏡好きということもあり、色めき立ったが、それが何か性的な欲望の発露だったかといえばわからない。最後に一番広く付き合いたいとか友達になりたいとかについて。付き合いたいとは思わないが、本好きだし友達にはなってみたいと思う。

 こうやって批判してきたばかりではあるが、最後に私が思う彼女の良いところを挙げておかねばならない。彼らが評しているような言葉を使ってはならない以上、別の表現を編み出さなければならず、それは何かということを数か月考えていたが、ぴったりのものがありました。慎慮 prudenceです。一般的に、勇気、節制、正義といった並ぶ徳として捉えられている概念で、慎慮のみでは優柔不断に陥ってしまうため、他の徳が必要とされるが、私はこの徳が一番好きだ。なぜならば、現代の多くの人が勇み足だったり、安易な結論を性急に出そうとしている点で、対抗的な価値を持つからである。

 宮沢小春の過去の発言を見ると、慎慮を読み取ることができる。例えば、いつかの配信で、自分が応援され、誰かを元気づける存在になったことについて、「こわい、いやこわいというのはちょっと違うけど」と話していた。また随分前の朝も140で宇佐美りんの『推し燃ゆ』で推しを背骨と表現されていたことについて触れつつ、「私も誰かの背骨になるかもしれないですし、そう思うとちょっと怖いですが。まあ、私が応援している側のときは、そこまで重く捉えていないというか、そんなに期待しすぎてないはずなので、ちょっと立場が変わっただけでちょっと難しく考えちゃうのかもですね」(2022/2/18)と話していたこともあった。また他の回では自分の好きな音楽に触れつつ、「もし私が音楽を紡げる側になれたとしたら、そういうような音楽をお届けできたらいいと思っています。秘密ね、こういうことあんまり言わないようにしてるんだ、まあ言ってったほうがいいのもわかるんですけど」(2022/4/20)と話していたこともあった。

 こうした発言を鑑みると、自分が他者に何か強い影響を及ぼしそうになることや、必ずしも達成できるかわからないことについて、非常に慎重な姿勢がうかがえる。本人はおそらくこうした側面を臆病さや優柔不断さと考えていると思われるが、私はむしろ慎重さ、あるいは慎慮する契機としてより肯定的なものとして思っている。こうした側面が見た目から想像される女性としてのつつましさや淑やかさに還元されない積極的な面だと考えている。

 こうして一年を振り返ったときに、初動のガチ恋的な状況から、溝を再確認し続け、その精神的不健康さから離脱することに成功した。そうした点で間違いなく契機となったのはマッチングアプリで人と会って話したことがある。10代後半から10年ちょっとくらい彼女がいて、数年前に分かれてひとり身になってから、ひとり身を謳歌していたが、年齢に基づいた社会的な圧というよりかは、単純に継続的に話ができる人がほしいという理由もあって、あとは先から述べているように不健康さから脱するためにマッチングアプリを始めた。当然始める前には、尊大な自尊心から随分と抵抗があったが、ついには11月末には課金までしてペアーズを始めることとなった。振り返れば、それまで予行演習的に無料でできるMatch-labやTinderを利用して、とりあえずメッセージをやり取りするということをしていた。そのなかで一人しか会うことはなかったが。

 ペアーズのほうは見ていると、Macth-labより当然人が多い、またTinderより治安が良い。その一方で、ディズニーとスパイファミリーとチェーンソーマンが好きですという浅瀬でぱしゃぱしゃしてそうな人か、カネコアヤノときのこ帝国が好きというそうした人々に回収されない私です、というポーズに見える人がいるように思われる。あとは近く結婚をとか、子供は欲しいですとか。この点は先述したようにそもそも戸籍に基づいた婚姻に反対しているので、首肯できない。くわえて、ペアーズでは相手と合っていると嬉しい価値観のような欄があり、そこでは怒ったりせず建設的な会話ができる人がいいです、と書かれていることが多い。私は怒ることはほぼない人間ではあるものの、感情と理性を対置するような考えはしないし、「建設的」であることがどこから密輸入されるのかについて懐疑的であった。そのため、ペアーズは人は多いけれど、まあ合わないだろうなと思うことが多い。そもそも好きになったから付き合うのであって、付き合うために好きになれそうな人を探しにいくということ自体が、私にとってあべこべではあったが。そうしたなかでも、ペアーズを始めてから最初にいいねをくれた人と随分と意気投合し、一度会ってからも連絡を取り続けていて、表面上うまくいっているように見える。

 これからよく話してみないとまだわからないところはあるが、私が何を話してもよく聞いてくれる。それは当然相手が配慮してくれる結果でもあるだろうし、ただそうした聞くという態度が何か男性の話を聞く女性として会得されたものであって、そうしたものの恩恵を私は与かっているだけのような気がして、居心地が悪くなっている。くわえて、とりあえずその一度会った人と話して、連絡を取り続けて満足していることや、人と付き合うなんて数年ぶりのことから、もしこのまま上手くいったとして、はて付き合うって何だっけと思っている。

 私がそもそも怒りとか懐疑心というものを原動力としている点で、今年起こった出来事のなかでそうした感情を抱いた点を挙げていけば切りがなくなってしまうので、こんなところで。他の細かい話は日記で書いています。私が宮沢小春と出会って、2月頃から何を思い続けてきたのかについて。初動の部分をあまり文章化していなかったのが惜しい。こうした主観的な経験の話ではなく、もう少し理論的な観点で、どのように推しやファンダム文化を見るのか、ということは、余力があれば別稿を書きます。

 こんなことを書き続けてなお、私は宮沢小春がどうなっていくのか、非常に楽しみにしているし、それを見届けたいと思っている。イベントに関しては、その感情よりも厳しさのほうが上回ってしまうのでおそらく行くことはないけれど。私の願望としては、小さ目の箱で彼女に朗読会をやってほしい。朗読コンテンツというもう一つの良かった点について、すっかり書き忘れているが。

 それでは。

IDOLY PRIDEをやってくれ

 こんばんは。

 私自身、何か特定のコンテンツにはまることがないという自覚が強くあるため、何かにどっぷりはまっているという感覚が非常にひさしぶりで驚いている。そう、それはタイトルのとおりIDOLY PRIDEに。

 ここまでちゃんとコンテンツに向き合えたのはナナシス以来な気がしなくもない。今回こうしたものを書こうと思ったのは、みんなにIDOLY PRIDEをやってほしいからであり、自分の気持ちを整理するためでもある。

 というのも、このコンテンツに今触れようとすると神田沙也加さんに触れざるを得ないし、彼女の件によって現実からフィクションへと偶然的な重なりにより、ある種、一つの過剰な大きな出来事、意味となっているかのようである。少なくとも、自分にとっては。

 アニメの大筋だけ書けば次のようになる。VENUSプログラムというAIによって算定されるアイドルランキングの頂点を決める物語となっている。第一話では、新人アイドルとしてデビューした神田沙也加が務める長瀬麻奈が瞬く間にランキングを駆け上るものの、決勝戦の直前に交通事故に遭い、亡くなるも、幽霊となって彼女の担当マネージャーのもとに現れる。時は流れ、彼女が所属していた事務所である星見プロダクションは新たなアイドルユニットを結成するために応募をかけ、そこに長瀬麻奈の妹である長瀬琴乃と長瀬麻奈の心臓を移植手術によって得た川咲さくらが現われ、それぞれユニットとしてサニーピースと月のテンペストを結成し、VENUSプログラムのランキングを駆け上がっていく。その過程で、かつて長瀬麻奈と対峙したLiz NoirやTRINITYAiLEと相まみえていく。という話になっている。

 さて、フィクションの過剰な意味が生じたのはまさに彼女が演じた長瀬麻奈が事故によって亡くなってしまった、という点にある。また長瀬麻奈が遺した唄が決勝で唄うことはできなかったものの、彼女の妹への思いを綴ったものでもありながら、広い意味を持って解釈できるような内容になっており、そうした点も過剰な意味を生じさせることに繋がっている。

 人にコンテンツを勧めようというときに、わざわざこんなことに触れなくてもいいだろうと思うかもしれないけども、もし稀有にも始めてくれた人たちが否応なく出くわしてしまうであろう出来事に私が誘ってしまったという点を加味すれば、これはある種の私の応答性であり、喪の行為でもある。

 こうした長い前置きを経て、以下では次のように進める。まずアニメ、アプリの良い点を挙げた後に、コンテンツ内で登場するユニットの曲について紹介する。

 

  • アニメ、アプリについて

 IDOLY PRIDEそれ自体を知ったのは私はアニメが最初であるもの、コンテンツの出発はそれ以前にある。非常に大きなコンテンツとなることを意図して企画されたもので、アニメを出発点として、アプリ、ライブ、生放送、ラジオと様々に展開されている。

 アプリのロード画面で時たま流される画像が以下のものであり、コンテンツ発表時に出されたものが次である(1)。

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 アイドルコンテンツを謡いながら明らかに穏やかではない表情である。各キャラクターにこうした華々しい舞台の裏の表情が用意されているので、それは各自見ていただくとして、長瀬琴乃の「呪縛」の意味合いは非常にわかりやすい。彼女は、スターとなった長瀬麻奈のアイドルの頂点になるという夢を引き継ぎつつも、麻奈の偉大さに比べてあまりに凡庸で越え出ることができず、また世間の評価も伴って姉の影にまさに「呪縛」されているのである。

 IDOLY PRIDEの良さの一つとは、こうした華々しいステージとは対照的に思われる日常やステージまでの道を丹念に描いている点である。kz(livetune)がインタビューで述べていたように、アイドルコンテンツというのは「みんなでがんばりましたね、よかったね」ということのみを描けばいいのではなく、むしろそこまでの挫折や衝突、そうしたものを経たなかでの成功や成長を描くことのほうがより重要なことだと思われる(2)。実際、アニメ放送は1クールしかないにも関わらず、ライブシーンというのは中盤までほとんどなく、地味なレッスンやメンバー間のいざこざなどを中心に扱っている。もちろんこうした点は初めにアニメだけを見ると、ややだれた印象を受けるかもしれないが、振り返って考えると非常に意味のあった構成となっていたように思われる。挫折や衝突からの成長物語は王道な展開であるにしても、どのようにして成長した地点にたどりついたのか、なぜ努力しようとしたのかなどを、各キャラクターの関係性のなかに適切に落とし込み、説得力をもって描き出すことに成功していたと思われる。

 ただアニメの少しだけ悪かった点を書いておけば、尺の問題上、中心のキャラクターである川咲さくら、長瀬琴乃のそうした過程を十分に追うことはできるものの、ユニットの他のキャラクターやライバルユニットの長瀬麻奈への固執やアイドルをやることへの動機を十分に描き切れていなかった点である。そのため、そうした点の描写がやや性急に見えて、意図を十分にくみ取れない点がある。

 そのため、もし始めてくれるとするならば、次のようなルートでいくことをおすすめしたい。まずアニメを見よう。アプリを始めて、メインストーリーとライバルユニットのストーリーを見よう。そのあとに曲を聞こう。そしてもう一度アニメを見ようということである。

 さて、そうしたステージの裏側を描くという点で彼女らの挫折や成長を描いているという点だけではなく、アプリではアニメ以降の話を第二章と銘打ってアイドル業界のいざこざを描いてもいる。内容はアプリで詳しく追っていただくとして、事務所同士のパワーゲームなども話に盛り込んでいる点で挑戦しているな、という気持ちにさせてくれる(3)。

 最後に細やかな点ではあるものの、個人的に気に入った点がストーリー内での各キャラクターへの配慮についてである。星見プロダクションでは、事務所の意向のもとにアイドルを置くのではなく、アイドルのために事務所があるという方針となっているが、こうした各キャラクターの人格に対して配慮するという点が形式的な望ましさとしてではなく、ストーリー上でも実質的に行われていると感じられる。

 アイドルコンテンツといえば、水着がつきものではあるものの、そうしたものを行うにあたってアイドルとマネージャーのあいだのストーリーがあり、一定の配慮が行われようとしているのを読み取れる。

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 結局、水着を着ることになっているものの、途中でこうした会話が挟まれるだけでも印象は異なるように思われる。

 では、それぞれのユニットについて次は紹介していこう。IDOLY PRIDEでユニットについて特徴的な点は、それぞれのユニットにそれぞれ個別の作曲家がすでに決まっており、また楽曲の方向性や使われる音、ダンスの振り付けなど非常に統一され、よく練られている点である。それぞれ見ていこう。

 

  • 長瀬麻奈

 ここまで触れてきたように、長瀬麻奈はVENUSプログラムの決勝戦直前で亡くなってしまい、伝説と化したアイドルである。どのコンテンツが、とは具体的には思い浮かばないものの、伝説のアイドルが出てきたときに視聴者側があまりその設定に納得しないケースは時々ある。しかし、彼女の楽曲を聞くと、「ああ、これはどんどん勝っていくだろうし、伝説といわれたのうなずける」という気持ちにさせてくれる。

 いくつか楽曲が作成されており、少し紹介しよう。

open.spotify.com

 song for youは、彼女が決勝戦で妹を思って唄おうとしていた曲である。アニメでは、川咲さくらや長瀬琴乃がかわりに唄うことになった。今、彼女の曲を誰かがカバーして唄うことに意味が付加され過ぎていて非常につらいものがあるものの、非常に良い曲。

 

open.spotify.com

 アニメを一通り見て、アプリをやっていたもののアルバムがリリースされてこの曲を聞いた時に、コンテンツに一気にはまり込むきっかけとなった曲。楽曲の軽やかさだけではなく、どの曲でもそうだが、情感の込め方が非常に良い。

 

  • サニーピース

 川咲さくらがリーダーとなっているグループ。サニーピースの作曲担当は北川勝利。そしてユニット名のとおり、振りにはピースが多く使われる。

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youtu.be

 私がサニーピースで一番好きな曲は、EVERYDAY!SUNNYDAY!。アニメでは、問題を乗り越えて、自分たちで自分たちのための曲を作ろうといって作られた曲。MVでは非常にわかりやすく挫折や軋轢を乗り越えて、今の自分に至った過程が描かれていて、それに合った歌詞がとても良い(4)。

 また個人的に好きな点として、二番目のサビで、普段は引っ込み思案の白石千沙がソロをやっているところ。

 

 長瀬琴乃をリーダーとしたグループ。作曲担当は利根川貴之。よく使われてる振りはこの謎のやつ。

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youtu.be

 こちらもアニメでは、問題を乗り越えたあとに作られた曲。姉に縛られていた長瀬琴乃がグループとして、アイドルを目指していく決意がよく表れた曲で一番好きです。

 正直に言えば、月のテンペストの曲である月下儚美を聞いた時は、絶妙にかっこよくなりきれないダサさだと思ってしまってそこまで好きになれなかったものの、The One and Onlyから他の曲を聞いてたら徐々に味わい深さがわかってきた。

 

Liz Noirという名の中身はスフィア。作曲担当はQ-MHz。Liz Noirといえばこのよくわからないポーズ。かっこいいけど。

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youtu.be

 こちらはなんというかダサカッコいいというのがぴったりな感じ。このMVはかわいくて好きです。

open.spotify.com

 あと先日発売された二枚目のアルバムに入ってたこちらの楽曲はエモ、スクリーモ系にありそう。途中で台詞をいれちゃうあたりがダサいんだけど、一周回ってかっこいい。まだアプリ内では追加されておらず、どのようにストーリーに絡んでくるのかが楽しみ。

 

  • TRINITYAiLE

TRINITYAiLEという名のTrySail。作曲担当はkz(livetune)。振りはユニット名を反映して、△を描くやつ。gifでも作ればよかった。

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youtu.be

 kzらしいシンセの使い方が印象的な曲。ハイトーンの部分のシンセとベースラインのゆるやかなシンセが好きです。TRINITYAiLEのモチーフが羽となっているが、インタビューで語られているように、この曲は必ずしも飛び立てているわけではなく、このメンバーの3人で飛び立っていこう、この3人ならばきっといけるよね、というステージまでへの過程を表している歌詞ともなっていて良いです。

open.spotify.com

 あとこちらは先日発売されたアルバムに収録されていたクリスマスソング。シンセ強めというよりかは、メロディー重視となっている。個人的にこの楽曲の好きな点は、サビで使われているリフがCメロでも使われており、Cメロの唄が転調する部分と相まって階梯を登っていくような感じがしてる点。

 

 あとは星見プロダクションとして全体楽曲がありますが、それはアニメを見る中で楽しんでいただくとして、あとはIDOLY PRIDEをやってくれと言うだけ。

 

(1)この画像は次から転載した。

nextm.jp

(2)念頭にナナシスでもあるんか、とこちら側は思ってしまって少し笑ってしまう。

www.youtube.com

(3)こういう業界のパワーゲームの話を持ち込んでくるとナナシスをやはり思い出してしまう。

(4)川咲さくら役の菅野真衣がインタビューで語るように、サニーピースはユニット名や楽曲だけを見れば明るいグループのように思われるかもしれないが、意外と各キャラクターに焦点を当てると影の部分も多く、そうした点も反映されたMVとなっている。

dengekionline.com

2021よかった漫画

 なんとなくやる気になったのでまとめてみる。

ものすごく変わったものを読んでいるわけではなく、ああそれ好きならそうだよねというラインナップです。

同人誌についてはほとんどチェックしておらず、またウェブ連載もの短編などについてはちらちら見ているものの覚えておらず、そのため商業として出版されたもの限定です。

  • 吉田真百合/ライカの星
  • www.kadokawa.co.jpソビエトで宇宙に送られたライカ犬が人類に復讐をする話+いくつかの短編。まず装丁が黒字に金の箔押しで素敵です。己の孤独な復讐心と相反するように犬となっていく仲間たち、宇宙のきらめきの描き方が好きでした。

  • 天雷様と人間のへそ―平庫ワカ初期作品集―/平庫ワカ
  • www.kadokawa.co.jp昨年出していた『マイ・ブロークン・マリコ』があんまりにも良かった平庫ワカの作品集。非常にばらばらなものを扱っているものの、作品全体を通して、「自分にできそうなこと」と「自分にとってはどうにもならないこと」とのあいだの境界線をどのように引くべきかという葛藤が通底しているように見られた。後者を前者へと過剰に見積もれば見積もるほど一見すると責任感を強く持っているかのように見えるものの、それはただどうしようもないことを抱えているだけであって破綻してしまう。そうした責任のあげおろしをどうするかということを描いているように思えた。それぞれの掌編にコメントが付されていたが、そう考えると表題作でキャラクターそれぞれにパーソナリティを持たせて描くことがある種の荒療治と書かれていたが、少し得心する。I am Nobodyとコールスローのやつが好き。

  • 海、のち晴れ/高見奈緒
  • comic.pixiv.net去年の『マイ・ブロークン・マリコ』のような衝撃が少しあって、今年もそういうものに巡り合えてよかったと思えたもの。こうやって不安定なところから解放されて、かといってそれですべてが解決されているわけでもないけど、タイトルのようにわずかに晴れ間が見えてくるようなものが好きです。

  • 急がなくてもよいことを/ひうち棚
  • www.kadokawa.co.jp台詞を書かなくともコマで語らせるとはこのことで、情感たっぷりに描かれていて素晴らしいです。

  • つつがない生活/INA
  • to-ti.in前作の『牛乳配達DIARY』が良かったですが、今作も良かったです。映画を見にいく話と海外旅行、海外ツアーの話が好き。

  • 海が走るエンドロール/たらちねジョン
  • www.akitashoten.co.jpたしかに良かったけど、某漫画大賞の一位に選ばれていてびっくりした。

  • 今夜すき焼きだよ/谷口奈津子
  • kuragebunch.comちょうど今年の夫婦別姓の議論などが盛り上がっている時に読んで、なんてタイムリーと思ったもの。夫婦別姓に反対しているやつとかしょうもない男に投げつけたい。

  • かけおちガール/ばったん
  • kisscomic.comもとはいつ連載されていたかは知らないけど、書籍版がまとめて今年でたということで。私の中で谷口奈津子とばったんの二人がとても良くて、糞みたいな男とかそれに対峙するなかでのきつさ、恋愛の中での苦悩の描き方が好きです。今年は他も出してましたが、それもとても良かったです。

  • スキップとローファー/高松美咲
  • afternoon.kodansha.co.jpもう言わずと知れた漫画。人間関係が本当にぎりぎりで成り立っているということを描き出すのがうまい。高校一年生が終わり、二年生になる今後が楽しみ。アニメ化が決まったけど、不安で仕方ない。

  • ひらやすみ/真造圭伍
  • bigcomicbros.net結局こうたどってくると私は、戦う漫画とかを全く読まず、人間関係を描くものしか読んでいなくて、その類型のなかでばっちり。

  • 昴とスーさん/高橋那津子
  • www.kadokawa.co.jp一年に一回出るのをずっと楽しみにしてる。物語がようやく大きく動き出したところ。いつもキャラクターの表情だけではなく、背景までをも含めて感情の描き方が大好きです。メインのストーリー、キャラクターだけではなく、昴の親友やバイト先の店長など彼らもこの漫画の良さのうえで非常に重要で、好きです。

  • 結婚するって、本当ですか/若木民喜
  • bigcomicbros.net今年出た5巻で話がひと段落したということで。話の起承転結の作り方がお手本みたいでうまい。あと本成寺さんかわいい。

  • 思えば遠くにオブスクラ/靴下ぬぎ子
  • souffle.lifeただの飯漫画かなと思って一瞬敬遠したけど、そうではなくご飯のことがきっちりと生活に埋め込まれており、またただの海外生活紹介漫画でもなかったのも良かったです。

〈番外編〉

 以下、漫画に関連してただ良かったこと。

『とんがり帽子のアトリエ』のこのアテンションは非常に素晴らしかったです。

 表現の自由とかいって結局、作品で描かれることによるフラッシュバックや暴力が見過ごされがちであるなかで、こうした応答ができる作者をちゃんと応援したいです。

 ここまで見てわかる通り、ビームやハルタが好きな人間なのですが(あと心なしか好きな作家が不調を患っていることが多い気がしなくもない)、そのなかでも長年好きなのが『ジゼル・アラン』などを描いている笠井スイです。今年はなんと高円寺で展示をやってくれて見にいけたのが本当に嬉しかったです。

 お金がない大学院生なので絵を買えなかったのが心残り。漫画に戻ってきてくれても戻ってきてくれなくてもただ待っています。

 やっぱり何か忘れていることがある気もするけど以上!

 

2020ロスタイム+2021よかった音楽

そろそろ書いてもよかろうという頃合いなのでやります。

ただ例年思うのは、結局年間良かったものを出そうと思うも、良いという判断が状況に拘束されていて、どうしてもこの時期に良いと思えるものになりがちである。だから、来年の夏ごろにもう一度作り直すのがいいのではないかと毎年思う。面倒だからやらないのだけど。

今年は、とりあえず2020のを去年聞いてそのあときに聞いてよかったものも追加してみようかと思う。以下の順番は良さの度合いを示すものではなく、itunesの「最近追加した項目」を上から遡った順番。私自身の良さの基準としては、自分にとって耐久性がありそうなものです。

 

〈2020ロスタイム〉

  • 淺堤/不完整的村莊
    不完整的村莊

    不完整的村莊

    • 淺堤
    • マンドポップ
    • ¥1528

    music.apple.com

    今年の最初の方は台湾音楽を探すことに熱心になっててそれからよく聞いてた。
  • MICHII HARUKA x BVDDHASTEP/Howling

www.youtube.com

 道井さんといえばナナシスやらパチンコとしてよく知られていますが、戦車俱楽部をかつてやっていたりヒプマイに楽曲提供したりしている方とコラボしてアルバムを出されていました。MVのドット絵がかわいくて良い。

  • シュウタネギ/じかんはもどらないwww.youtube.comバレーボウイズが解散しソロプロジェクトを始めてからの最初のアルバム。爽やかさと疾走感があって自転車乗りながらにちょうどいい(交通違反
  • mel/dayflower
  • mel-jp.bandcamp.com勢いのあるシューゲイザーで好き。

  • קיקי מלינקי/שנת החתול
    שנת החתול

    שנת החתול

    • קיקי מלינקי
    • インディー・ロック
    • ¥1681

    music.apple.com

    イスラエルっぽさがあるとかそういうわけではなくて、シンプルなスリーピースバンドで結局こういうのを好きになる。
  • Andrea Santiago/Trilogía de las Bestias 
    Trilogía de las Bestias - Single

    Trilogía de las Bestias - Single

    • Andrea Santiago
    • ポップ
    • ¥612

    music.apple.com

    3曲入りシングル。今年出していたシングルも良くて、アルバム出るのが楽しみということで。
  • Blue Flower/Love in Gold
    Love in Gold

    Love in Gold

    music.apple.com

    ネオソウルだけど、この曲について考えると、今年の夏にワクチンの一回目を打ちに本郷に行ったけど、あまり行かなくて会場がわからなくて暑い中うろうろしていたのを思い出す。駒場と本郷のご飯事情の格差を思い知った。

〈2021〉

  • Pearl Charles/Magic Mirror
    Magic Mirror

    Magic Mirror

    music.apple.com

    キラキラしていて単純にハッピーになる。
  • Kylie V/Big Blue

    music.apple.com

    今年の初めによく聞いていた。あとで調べてものすごい年齢が若くてびっくりした。
  • Koji Shibuya/Lots of Birds
  • kojishibuya.bandcamp.comじっくりとずっと聞いていられる。別に出していたシングルも良かったのでぜひ。

  • Sofía Campos/Lugares Imaginarios
    Lugares Imaginarios

    Lugares Imaginarios

    • Sofía Campos
    • シンガーソングライター
    • ¥1375

    music.apple.com

    ラテン調のテンポの良さと唄の軽やかさで引っ張ってくれて良い。
  • Clara Delgado/antes da palavra
    antes da palavra

    antes da palavra

    • Clara Delgado
    • MPB
    • ¥917

    music.apple.com

    ボサノバをベースにシンセが上手く取り入れられていて、まさにMPBという具合が好き。
  • IDOLY PRIDE/Collection Album[奇跡]
    Collection Album [奇跡]

    Collection Album [奇跡]

    • Various Artists
    • アニメ
    • ¥2139

    music.apple.com

    IDOLY PRIDEという今年やっていたアニメ、それをもとにリリースされたソシャゲのアルバム。メインのユニットの曲はそうでもないけど、作中で伝説のアイドルとされている長瀬麻奈の楽曲は抜群に良い。神田沙也加さんありがとう。
  • Caetano Veloso/Meu Coco

    music.apple.com

    一曲目の表題曲のインパクトがとにかく強い。どの曲も細部まで作りこまれていてとても良い。仮にランキングをつけたとしたら、2番目くらいには好き。あとジャケットは今年一番好きかもしれない。
  • downt/downt

    music.apple.com

    最近の日本のバンドはどれも楽曲の完成度高くておしゃれなんだけど、どれも好きになれないなかで、ひさしぶりに好きだと思えたもの。一方で、過去に好きだったバンドに懐古的に照らし合わせてしまっているだけかもしれないと反省的にも思う。
  • Jennifer Souza/Pacífica Pedra Branca
    Pacifica Pedra Branca

    Pacifica Pedra Branca

    • ジェニフェル・ソウザ
    • ワールド
    • ¥2139

    music.apple.com

    長らく新しいアルバムを待っていてようやく来てくれた。間違いなく今年の一番です。全体としてあたたかみが素晴らしく、夜中にひっそりと聴きたい。
  • イ・ラン/オオカミが現われた
    オオカミが現れた

    オオカミが現れた

    • イ・ラン
    • フォーク
    • ¥1528

    music.apple.com

    名前を見て、そういえば柴田聡子との共作出して以来聞いてなかったなと気づいた。ブックレット付CD買えてないので欲しい。
  • Clara Presta/Pájara
    Pájara

    Pájara

    • Clara Presta
    • ラテン
    • ¥1375

    music.apple.com

    おそらく今年のラテンのランキングに名前がよく載るだろうと思われるもの。
  • Juana Molina/Segundo(Remastered)

    music.apple.com

    リマスター記念に載せてみた。ただリマスター前のものを聞いていないのでどこらへんが違うかはよくわからない。
  • Drug Store Romeos/The world within our bedrooms

    music.apple.com

    とにかく声がかわいい。少し変則的なドリームポップ。
  • Carolina Donati/Arde
    Arde

    Arde

    • Carolina Donati
    • ポップ
    • ¥1528

    music.apple.com

    アルゼンチンの女性SSW。以前リリースしていたアルバムも良かったがこれも好きだった。最後の曲みたいなアウトロに長いやつに弱い人間です。
  • Parannoul/To see the Next Part of the Dream
    To See the Next Part of the Dream

    To See the Next Part of the Dream

    • Parannoul
    • ロック
    • ¥1375

    music.apple.com

    もうこの言い方は廃れてしまったけど、ロキノン好きだった人間としては挙げざるを得ない。
  • Bruno Penadas/Private Reasons
    Private Reasons

    Private Reasons

    • Bruno Pernadas
    • ポップ
    • ¥1833

    music.apple.com

    ちょっとひさしぶりのアルバム。1曲目のサビへのメロディー入り方とか大好きです。
  • Subsonic Eye/Nature of Things

     

    Nature of Things

    Nature of Things

    • Subsonic Eye
    • インディー・ロック
    • ¥1528

    music.apple.com

    今年の前半によく聞いてた一枚。クリーンに少しだけ歪みをかけたギターが気持ちい。音の作り方のせいかThis Town Needs Gunsを少しだけ思い出す。
  • わがつま/第1集
    第1集

    第1集

    • わがつま
    • J-Pop
    • ¥1528

    music.apple.com

    田中ヤコブがシングルを出した時に唄っていたうちの一人。一人で活動したりするのかなと楽しみにしていたらリリースされていた。不思議なポップで良かったです。
  • Banda Tereza/Animes, Kylie Janner, Clocks & Remédios
    Animes, Kylie Jenner, Glocks & Remédios

    Animes, Kylie Jenner, Glocks & Remédios

    • Banda Tereza
    • インディ・ポップ
    • ¥1528

    music.apple.com

    タイトルやジャケ、一曲目のタイトル"The Girl from Tokyo-3"などを見てわかるとおりそうしたオマージュなのかと思いきや、さっぱりわからなくて爽やかポップス。
  • Nair Mirabrat/Juntos Ahora
    Juntos Ahora

    Juntos Ahora

    • Nair Mirabrat
    • ラテンジャズ
    • ¥1681

    music.apple.com

    たしかこれが今年の一枚目だった記憶。参加メンバーが豪華で良いです。
  • 木野花/ひとりとひとりとwww.youtube.comこちらも田中ヤコブのシングルに参加していたうちの一人。声がとても好きでリリースするのを楽しみにしていた。

以上!