IDOLY PRIDEをやってくれ

 こんばんは。

 私自身、何か特定のコンテンツにはまることがないという自覚が強くあるため、何かにどっぷりはまっているという感覚が非常にひさしぶりで驚いている。そう、それはタイトルのとおりIDOLY PRIDEに。

 ここまでちゃんとコンテンツに向き合えたのはナナシス以来な気がしなくもない。今回こうしたものを書こうと思ったのは、みんなにIDOLY PRIDEをやってほしいからであり、自分の気持ちを整理するためでもある。

 というのも、このコンテンツに今触れようとすると神田沙也加さんに触れざるを得ないし、彼女の件によって現実からフィクションへと偶然的な重なりにより、ある種、一つの過剰な大きな出来事、意味となっているかのようである。少なくとも、自分にとっては。

 アニメの大筋だけ書けば次のようになる。VENUSプログラムというAIによって算定されるアイドルランキングの頂点を決める物語となっている。第一話では、新人アイドルとしてデビューした神田沙也加が務める長瀬麻奈が瞬く間にランキングを駆け上るものの、決勝戦の直前に交通事故に遭い、亡くなるも、幽霊となって彼女の担当マネージャーのもとに現れる。時は流れ、彼女が所属していた事務所である星見プロダクションは新たなアイドルユニットを結成するために応募をかけ、そこに長瀬麻奈の妹である長瀬琴乃と長瀬麻奈の心臓を移植手術によって得た川咲さくらが現われ、それぞれユニットとしてサニーピースと月のテンペストを結成し、VENUSプログラムのランキングを駆け上がっていく。その過程で、かつて長瀬麻奈と対峙したLiz NoirやTRINITYAiLEと相まみえていく。という話になっている。

 さて、フィクションの過剰な意味が生じたのはまさに彼女が演じた長瀬麻奈が事故によって亡くなってしまった、という点にある。また長瀬麻奈が遺した唄が決勝で唄うことはできなかったものの、彼女の妹への思いを綴ったものでもありながら、広い意味を持って解釈できるような内容になっており、そうした点も過剰な意味を生じさせることに繋がっている。

 人にコンテンツを勧めようというときに、わざわざこんなことに触れなくてもいいだろうと思うかもしれないけども、もし稀有にも始めてくれた人たちが否応なく出くわしてしまうであろう出来事に私が誘ってしまったという点を加味すれば、これはある種の私の応答性であり、喪の行為でもある。

 こうした長い前置きを経て、以下では次のように進める。まずアニメ、アプリの良い点を挙げた後に、コンテンツ内で登場するユニットの曲について紹介する。

 

  • アニメ、アプリについて

 IDOLY PRIDEそれ自体を知ったのは私はアニメが最初であるもの、コンテンツの出発はそれ以前にある。非常に大きなコンテンツとなることを意図して企画されたもので、アニメを出発点として、アプリ、ライブ、生放送、ラジオと様々に展開されている。

 アプリのロード画面で時たま流される画像が以下のものであり、コンテンツ発表時に出されたものが次である(1)。

f:id:sui_sugar:20220105200255p:plain

f:id:sui_sugar:20220105200251p:plain

 アイドルコンテンツを謡いながら明らかに穏やかではない表情である。各キャラクターにこうした華々しい舞台の裏の表情が用意されているので、それは各自見ていただくとして、長瀬琴乃の「呪縛」の意味合いは非常にわかりやすい。彼女は、スターとなった長瀬麻奈のアイドルの頂点になるという夢を引き継ぎつつも、麻奈の偉大さに比べてあまりに凡庸で越え出ることができず、また世間の評価も伴って姉の影にまさに「呪縛」されているのである。

 IDOLY PRIDEの良さの一つとは、こうした華々しいステージとは対照的に思われる日常やステージまでの道を丹念に描いている点である。kz(livetune)がインタビューで述べていたように、アイドルコンテンツというのは「みんなでがんばりましたね、よかったね」ということのみを描けばいいのではなく、むしろそこまでの挫折や衝突、そうしたものを経たなかでの成功や成長を描くことのほうがより重要なことだと思われる(2)。実際、アニメ放送は1クールしかないにも関わらず、ライブシーンというのは中盤までほとんどなく、地味なレッスンやメンバー間のいざこざなどを中心に扱っている。もちろんこうした点は初めにアニメだけを見ると、ややだれた印象を受けるかもしれないが、振り返って考えると非常に意味のあった構成となっていたように思われる。挫折や衝突からの成長物語は王道な展開であるにしても、どのようにして成長した地点にたどりついたのか、なぜ努力しようとしたのかなどを、各キャラクターの関係性のなかに適切に落とし込み、説得力をもって描き出すことに成功していたと思われる。

 ただアニメの少しだけ悪かった点を書いておけば、尺の問題上、中心のキャラクターである川咲さくら、長瀬琴乃のそうした過程を十分に追うことはできるものの、ユニットの他のキャラクターやライバルユニットの長瀬麻奈への固執やアイドルをやることへの動機を十分に描き切れていなかった点である。そのため、そうした点の描写がやや性急に見えて、意図を十分にくみ取れない点がある。

 そのため、もし始めてくれるとするならば、次のようなルートでいくことをおすすめしたい。まずアニメを見よう。アプリを始めて、メインストーリーとライバルユニットのストーリーを見よう。そのあとに曲を聞こう。そしてもう一度アニメを見ようということである。

 さて、そうしたステージの裏側を描くという点で彼女らの挫折や成長を描いているという点だけではなく、アプリではアニメ以降の話を第二章と銘打ってアイドル業界のいざこざを描いてもいる。内容はアプリで詳しく追っていただくとして、事務所同士のパワーゲームなども話に盛り込んでいる点で挑戦しているな、という気持ちにさせてくれる(3)。

 最後に細やかな点ではあるものの、個人的に気に入った点がストーリー内での各キャラクターへの配慮についてである。星見プロダクションでは、事務所の意向のもとにアイドルを置くのではなく、アイドルのために事務所があるという方針となっているが、こうした各キャラクターの人格に対して配慮するという点が形式的な望ましさとしてではなく、ストーリー上でも実質的に行われていると感じられる。

 アイドルコンテンツといえば、水着がつきものではあるものの、そうしたものを行うにあたってアイドルとマネージャーのあいだのストーリーがあり、一定の配慮が行われようとしているのを読み取れる。

f:id:sui_sugar:20220105204041p:plain

f:id:sui_sugar:20220105204053p:plain

 結局、水着を着ることになっているものの、途中でこうした会話が挟まれるだけでも印象は異なるように思われる。

 では、それぞれのユニットについて次は紹介していこう。IDOLY PRIDEでユニットについて特徴的な点は、それぞれのユニットにそれぞれ個別の作曲家がすでに決まっており、また楽曲の方向性や使われる音、ダンスの振り付けなど非常に統一され、よく練られている点である。それぞれ見ていこう。

 

  • 長瀬麻奈

 ここまで触れてきたように、長瀬麻奈はVENUSプログラムの決勝戦直前で亡くなってしまい、伝説と化したアイドルである。どのコンテンツが、とは具体的には思い浮かばないものの、伝説のアイドルが出てきたときに視聴者側があまりその設定に納得しないケースは時々ある。しかし、彼女の楽曲を聞くと、「ああ、これはどんどん勝っていくだろうし、伝説といわれたのうなずける」という気持ちにさせてくれる。

 いくつか楽曲が作成されており、少し紹介しよう。

open.spotify.com

 song for youは、彼女が決勝戦で妹を思って唄おうとしていた曲である。アニメでは、川咲さくらや長瀬琴乃がかわりに唄うことになった。今、彼女の曲を誰かがカバーして唄うことに意味が付加され過ぎていて非常につらいものがあるものの、非常に良い曲。

 

open.spotify.com

 アニメを一通り見て、アプリをやっていたもののアルバムがリリースされてこの曲を聞いた時に、コンテンツに一気にはまり込むきっかけとなった曲。楽曲の軽やかさだけではなく、どの曲でもそうだが、情感の込め方が非常に良い。

 

  • サニーピース

 川咲さくらがリーダーとなっているグループ。サニーピースの作曲担当は北川勝利。そしてユニット名のとおり、振りにはピースが多く使われる。

f:id:sui_sugar:20220105210325j:plain

youtu.be

 私がサニーピースで一番好きな曲は、EVERYDAY!SUNNYDAY!。アニメでは、問題を乗り越えて、自分たちで自分たちのための曲を作ろうといって作られた曲。MVでは非常にわかりやすく挫折や軋轢を乗り越えて、今の自分に至った過程が描かれていて、それに合った歌詞がとても良い(4)。

 また個人的に好きな点として、二番目のサビで、普段は引っ込み思案の白石千沙がソロをやっているところ。

 

 長瀬琴乃をリーダーとしたグループ。作曲担当は利根川貴之。よく使われてる振りはこの謎のやつ。

f:id:sui_sugar:20220105210530j:plain

f:id:sui_sugar:20220105210248j:plain

 

 

youtu.be

 こちらもアニメでは、問題を乗り越えたあとに作られた曲。姉に縛られていた長瀬琴乃がグループとして、アイドルを目指していく決意がよく表れた曲で一番好きです。

 正直に言えば、月のテンペストの曲である月下儚美を聞いた時は、絶妙にかっこよくなりきれないダサさだと思ってしまってそこまで好きになれなかったものの、The One and Onlyから他の曲を聞いてたら徐々に味わい深さがわかってきた。

 

Liz Noirという名の中身はスフィア。作曲担当はQ-MHz。Liz Noirといえばこのよくわからないポーズ。かっこいいけど。

f:id:sui_sugar:20220105210041j:plain

youtu.be

 こちらはなんというかダサカッコいいというのがぴったりな感じ。このMVはかわいくて好きです。

open.spotify.com

 あと先日発売された二枚目のアルバムに入ってたこちらの楽曲はエモ、スクリーモ系にありそう。途中で台詞をいれちゃうあたりがダサいんだけど、一周回ってかっこいい。まだアプリ内では追加されておらず、どのようにストーリーに絡んでくるのかが楽しみ。

 

  • TRINITYAiLE

TRINITYAiLEという名のTrySail。作曲担当はkz(livetune)。振りはユニット名を反映して、△を描くやつ。gifでも作ればよかった。

f:id:sui_sugar:20220105210308j:plain

youtu.be

 kzらしいシンセの使い方が印象的な曲。ハイトーンの部分のシンセとベースラインのゆるやかなシンセが好きです。TRINITYAiLEのモチーフが羽となっているが、インタビューで語られているように、この曲は必ずしも飛び立てているわけではなく、このメンバーの3人で飛び立っていこう、この3人ならばきっといけるよね、というステージまでへの過程を表している歌詞ともなっていて良いです。

open.spotify.com

 あとこちらは先日発売されたアルバムに収録されていたクリスマスソング。シンセ強めというよりかは、メロディー重視となっている。個人的にこの楽曲の好きな点は、サビで使われているリフがCメロでも使われており、Cメロの唄が転調する部分と相まって階梯を登っていくような感じがしてる点。

 

 あとは星見プロダクションとして全体楽曲がありますが、それはアニメを見る中で楽しんでいただくとして、あとはIDOLY PRIDEをやってくれと言うだけ。

 

(1)この画像は次から転載した。

nextm.jp

(2)念頭にナナシスでもあるんか、とこちら側は思ってしまって少し笑ってしまう。

www.youtube.com

(3)こういう業界のパワーゲームの話を持ち込んでくるとナナシスをやはり思い出してしまう。

(4)川咲さくら役の菅野真衣がインタビューで語るように、サニーピースはユニット名や楽曲だけを見れば明るいグループのように思われるかもしれないが、意外と各キャラクターに焦点を当てると影の部分も多く、そうした点も反映されたMVとなっている。

dengekionline.com