うどん記念日

  8/31から9/4まで旅に出かけていました。おばんでございます。

◆僕は、まさに自動操縦してくれる自動車の登場を信じているので運転免許証を取る必要などないと思って取っていないのですが、その操縦しなければならないという自動車の運転免許証を持っている大学の友人におんぶ抱っこして旅に出てきました。旅行というよりは旅でしたね。

 人間はいつまでも部屋に篭っていると不幸も何もかもまとめて部屋に篭めてしまうという、坂口安吾の一文を先日読んで、この旅に参加することを決意。貯金も果てようとしているのに。

 僕らはずんずんと車で突き進み、愛知、三重、鳴門大橋を経て徳島、香川、京都、そして東京と帰ってきました。この目的がほぼ香川でうどんを食べるというものだったので、3日目に早々と達成してしまうと後は気楽なもので、土地勘のないままにぶらぶらと走っていました。旅ですね。うどんは美味しかったです。つゆが美味しかったです。何より安いね。あと黒髪ロングの個人的に非常にかわいい香川JKが僕と同じやっすいうどんを食べていたことに感動。それだけでも家を出た甲斐がありました。

 当初前日くらいに台風の予報が出ていて、それに突入していくのは不安視されたものの、まさに雲散霧消。しかし、帰りがけにまた台風発生。今度は追われるように帰ることに。そして、僕達が災厄の種を蒔いてきたかのように、通りがかった地方では次々と大雨警報が発令。四国に至っては竜巻警報発令。僕らは大雨に追われるように、それでいながら無傷で帰郷。西日本の皆様大変ご迷惑をおかけいたしました。災厄の種を蒔いたのは僕らかもしれません。

 

◆少し忘れていた「僕らの自意識」の2話を掲載します。これは3分あれば読める。GJ部から発想して作ったもだけあって、そんな感じです。

 これを書いた時大学で五文字しりとりが流行っていたような気がしました。教室で楽しげに繰り広げられているのを何度か耳にしただけで、僕は参加していないのでよくは知りませんが。別に羨ましくてこれを書いたわけではないということだけは注釈しておきます。

 

 僕らの自意識02-五文字しりとり

 

 いつもの通り彼女はパソコンに向かいウィンドウを二つ開いて一つはチェス、もう一つは待ち時間の間ネットサーフィンをして、カチカチとマウスを動かしている。僕はそれを眺めながら座椅子におさまり文庫本を読んでいる。最近アニメ化されたライトノベルを読み終えて、今日はサリンジャーの「大工よ屋根の梁を高く上げよ」を読んでいた。

 カチっとクリック音が止み一息ついて彼女は言った。「ねえ、五文字しりとりをしてみないかい」

 「あー、最近それやってる人よく見るけど、珍しく流行りに乗ろうなんて一体どういう風の吹きまわしなのでしょうか」

頭は半分会話、半分サリンジャー。やはり我らが文学の守護神サリンジャーは偉大だ。

 「いや、チェスが少し煮詰まったから単純に頭の体操にね。通常のしりとりなら最初は『しりとり』から始めるが、この場合はどうしたものかね」

 「それじゃあ、五しりとりからで。ということで、五しりとり。はいどうぞ」

 「なんて安直な・・・。まあ他に考えるのもあれだし、ここで躓いていても仕方がない。とりあえず、目についたところで陸上」と間髪をおかずに返してくる。

 「パソコン見ながらやるなんて少し卑怯じゃないか?まあいいや。ウエスタン

 「そっちは本を持っているではないか。それに最初からそんな調子で君はやる気があるのかね?そんな君にンジャメナだ」

回転椅子の背もたれを抱きこちらに向き直って渾身の一撃を放つ。

 「やる気ならあるぞー。そうだ、知っているかー、しりとりは昔は護符のための呪文として使われていたんだぞー」

 「そんなことは当然知っている。そして、そんなことを言って君が話を逸らそうとしていることも知っている。それに、それならば途切れさせてはいけない筈だ。さあ、だぞ」

 「そしたら、ナ イ ン さ まで。ちなみにこれはFSSからね」

不承不承に思いついた名前で返す。

 「固有名詞に関しては一般的に認知されている名前ならいいというルールがあるみたいだが、ナイン様って。大概の人は知らない可能性のほうが高いのでは…。私が知っていたからいいものを。気を撮り直して前結びだ」

ここでも間髪を入れずに返してくる。全く憎らしい奴だ。

 「ナイン様知ってる女子って…。僕としては大歓迎だけどさ。なら、ビオランテで」

FSSを知っている女の子なんて言わずもがな少ないというより、僕が知っている限りでは全くおらず、ましてや内容まで把握している女の子とはレッドデータブックに登録されてもいいくらい希少だ。差し詰め絶滅危惧I類くらい。それに加えてZOIDSまで把握していたらもっと素晴らしい。これは今度とりあえず無印のDVD-BOX鑑賞会を開いて教えこむべきだろう。

 「ま、待て。ビオランテとは何なのだ」

 「FSSを知っていてビオランテを知らないって、それは不思議だよ」

 「FSSを知っているのは君の本棚にあったから少し暇つぶしに読ませてもらっただけだよ。少し待っていてくれたまえ」

彼女は最初のとおりにくるりとパソコンに向き直ってかたかたと調べて感心している。しかし、FSSは少しの暇つぶしどころではないだろうよ。

 「わかった。理解した。どうやらゴジラシリーズの怪獣のようだね。ゴジラシリーズは有名だしこれはいいだろう。ならテネスムスだ。ふふん、これならどうだ」

さっきは一般の認識がなんだーとか言っていたが、有名作なのに知らなかった自分の恥をごまかすように催促してきた。

 彼女はどうやら自分に一般常識が欠如していると認識させられる事が嫌らしい。よく僕がさも一般常識かのように語って彼女が苦悩しているのを見て楽しむことがある。そして負けず嫌いだからこそこんな単語をぶつけてくる。意味は全く僕は知らない。聞いたこともない。

 「さっき言っていた一般的な単語云々っていうのはどうなったのでしょうか、ねえ・・・」

 「ふふん、知らないのならば説明してあげよう。テネスムスとは便意をもよおすのに排便がない、または便意はあっても少量しか出ないのに頻回に便意をもよおす状態を言う。またの名をしぶり腹と言う。以上家庭の医学より」

名誉挽回とばかりに腕を組んで自慢気に言うが、意味を考えるともう少しましな単語がなかったのだろうか。女性的に考えて。

 だがしかし、こちらも負けてはいられない。彼女の語彙を上回らなければならない。

ね。ならばス、スナフキンだ」

考えあぐねた末何も出てこなくて無難なものに落ち着く。スから始まるものを考えているとどうしてもSmells like a teen spiritが邪魔をしてきた。しかし、彼女がこれ以上ンから始まる単語なんて持っているはずもないからこれでいいのだ。

 「ンだね。確かに君はスナフキンと言ったね。ならばこの勝負は私の勝ちだ!」

高らかな勝利宣言。はて何の勝負だったんだろうか。

 一つ咳払いをして彼女は言う。「どうやら途中で君の目指すべき方向は変わっていたようだが、今日の五文字しりとりは私の勝利ということだね。因みにンで始まる単語はンガンデレとかンゼレコレとかある。まあ、もう頭の体操には充分だ。ありがとう」

 これ以降僕の抗議は一切聞き入られずに彼女はこちらも向かずにパソコンでチェスを始め、一応聞いているよ、わかっているよという意味なのか手をひらひらと振るだけであった。