再構築

ここは未来、もしくは平行世界

とても便利な時代だ

だって、ほら少し手を伸ばしてぴっぴっとやればいいんだ

な?簡単かつ便利だろう?

といっても僕が産まれた頃からこうなってるから、簡単だとか便利だなんてさっぱりだ

だって、これが当たり前だし、普通だろう?

辺りから響くのは同じような電子音

そして家の中で伝わる物音だけ、それだけ

ざざっという音がして、部屋の隅においてある輪の中に一人の女の子が現れた

彼女は僕と手を合わせてすぐに帰った

この時代の伝えるということはこういうことなのだ

手を合わせて、自分の考えを伝えるために、少しだけ合わせた手に力をこめる

余計な考え、僕が漠然と彼女に抱いている異質な考えが漏れてしまうのを恐れた。そして同時に漏れて伝わってしまえばいいと思った。

彼女から流れてきたのは、あたたかさもつめたさもなく他愛もないこと

手がちょっとだけ震え、顔が赤いことに気づいたが、僕には何もわからない

この世界の人々の感情は錆び付いている

いやもともとそういったものが育っていないのかもしれない

きっとこの世界の人々に言わせてみれば、「非合理だ」とか「確証がない」だとか言われてしまうだろう

唯物的なのだ。神様はとっくに消えてしまっている

信仰心なんてものはない

そうだ、伝えるといえば昔は「唄」とか「本」とかそういうものがあったらしい

これは僕が父から聞き、父は祖父から聞き、まあとても昔のことだ

それにこないだ博物館のHPでそういうものを見た気がする

だがしかし全く非合理なものだ

そんなものは、自分の考えを電波とかで流せばいいし、回りくどいものは一切要らない。それで終わりなのだ

昔の人を知りたければタイムマシンにでも乗ればいい

そうだ。タイムマシンに乗って自分で確認すればいい

僕は家を出かける準備をした。一体いつぶりだろうか

扉が開くのを待って外に出た。何も変わらない、整然と並んだ家々

実に合理的だろう?

タイムマシンに使うのには政府のとこに行かなければならない、警備やらなんやらでワープは使えない

全く面倒だ

僕は飛び込んだ

視界に入ってきたのは人人人人人人人人人

僕の世界にこんなに人がいるのを見たことはない

そして同時に流れ込んできたのは音音音音音音

なんてうるさいんだ

これが唄ってやつなのか?

醜い、不潔だ、非合理的だと悪態をつくしかない

帰りたい

こんな世界にあるものがいいはずがない

しかしタイムマシンを使うと一日は帰れないのだ。僕は逃げ出した

僕は一夜過ごせるとこをさがした

この時代には金という前時代的貨幣システムがあることを思い出した

僕がそんなものを持ってるはずがない

なんてことだ

本当に仕方がないので、見つけたベンチに横になることにした

ここは幾分静かでいい

寒い。

少しだけ便利というものがわかった気がした

寒さで微睡む中に、音が流れ込んできた

さっきとは違う。なるほどきっとこれが唄というやつか。悪くはないと思った

明日、帰ったら彼女に唄というやつをきかせてみよう

彼女だってきっと同じように感じるはずだ

おやすみなさい

という話でした

ついったーであるポストを見てから勢いで書きました

手を合わせて、電波やらなんやらで僕らの思いを伝えられれば便利だろう、だがそしたら唄とか本はいらなくなるね

文学なんてなおさらだ

自分の考えを自分なりにまとめて表現することが伝えることだと思う

先日書いた有用性は置いといて、この伝えるとする行為

自分の感情というものをしっかりと口に出せるというのは大切なことだと思う

まあ誰かが見れば当然のことだし、当然さに気づければいい

便利。これはとても素晴らしいことであって決して悪いことではない、技術の革新には感謝しなければならないだろう

だがこの便利さが僕らの世界を狭めつまらなくしているのかもしれない

世界は知るには広すぎる。だからこそ面白く僕らの感情を広げそして入っていく余地があるのだ

ヒツジツキ/rumpus room

ではでは