2020年上半期良かった音楽

 おばんです。

 Twitterを眺めていると、上半期ベストのようなものが流れてきて、上半期まだぎりぎり終わってないのでは?と思いつつやってみよう。

 フィジカルでは、2019年にリリースされていても、Apple Musicで2020年にリリースされたものをカウントしている。それでは行ってみよう。順番はランク付けを反映するものではなく、ただ私のitunesのプレイリストの上から取っていった順番。

 

 日常の光景とバンドサウンドが巧妙に合わさっていて心地よい。

 プレリリースされた曲からかなり期待していたが、アルバムを通して期待を裏切らないかっこよさ。サイケ・ソウル。

 ギター主導のソウルミュージック。シンプルでかっこいい。

 今年最も良かったといえるものの一つ。10曲ながら30分程度しかなく、うっかりするとあっという間に一周してしまうので、よく耳を澄まさねばならぬ。

 みんな大好きStereolabにも所属していたJulien Gascの一枚。ゆるゆるとしたサイケ・ポップはこれからの季節に最適。

 ちょうど先週リリースされたばかりのチリのSSWによる一枚。MPBらしさ、インディーロックらしさがたまらなく良い。今のところ今年で一番良かった一枚にしたいと思っている。

 春頃に散歩して聞くには最適のポップス。ギターのコーラスがかかった具合やシンセサイザーの音色を考えると夏にもいいかもしれない。

 ピアノとストリングスの静かな一曲目から二曲目に入って始まるインディーロック。日本のインディーズ好きな人には相性が良さそうなので聞いてほしい。これも一番良かった一枚にしたい。

 これぞMPB!という一枚。タイトルにもなっている一曲目のTeletransporterがとても好き。

 ちまちまと一曲ずつシングルとしてリリースされていて、そのころから気になっていたが、ようやくアルバムとしてまとまってくれた。これもザ・MPB!という一枚。

 去年の暑い頃はよく韓国ソウルを聞いてたが、今年もお世話になりそうだと思わせてくれる一枚。これを聞きながらならば夏の日差しが強い日でも外出できそう。

 ドリームポップとして最高。

 曲の空間の作り方が非常に素晴らしい。

 ヘブライ語なので、ポルトガル語やらスペイン語以上に全く分からない。長大なアウトロが大好きな人間としては最後の曲のギターソロとともに演奏されるアウトロがたまらなく良い。

 中国のシューゲイザーバンド。ソウルらしさもあってやっぱり夏に聞きたい。

 みんな大好き上坂すみれのアルバム。声優アルバムとしてだけカウントしてしまうにはちょっと惜しいくらい良かった。SPYは最高。

 今年最も音が好き。空間の作り方、一つ一つの楽器の引き立て方、そして唄の入り方。どれを取っても素晴らしい。

 

 Apple Musicからダウンロードしたもののまだ聞けていないものが多い。いつも大学行ったりして帰り道やら散歩やらしている間に聞いていたことが多かったために、家にいるとそんなに捗らない。なんならノベンバの新譜だってまだ聞いてない。年末にどれだけ変わるかな。

 それでは。

Tokyo-7th Sisters Episode 5.0 Fall in Loveによせて

 おばんです。

 もうだいぶ前にナナシスのEpisode 5.0が終わり、私も遅ればせながら読んだのでまた覚え書きです。本エピソードは、何よりもまず驚くべきは時は4.0の2034年から流れ、2043年の話という点である。あのAXiSの激闘から数年が経過し、ナナスタは以前のような小さい事務所ではなく、4.0の最終話の最後の最後で華々しく仕事が多く舞い込み、その後おそらく年月をかけていまや多くの人々を雇う事務所となっている。しかし、そこには2034年時点で華々しい活躍をした777☆Sのほとんどの面々、そして六咲コニーの姿はない。777☆Sの他のメンバーとは異なり残された芹沢モモカは2代目マネージャーを就任し、同じくメンバーだった晴海シンジュは当時コドモ連合といわれた有栖シラユキ、星柿マノン、ターシャ・ロマノフスキーとともに新たなユニットとしてSeason of Love(SOL)を結成している。当時、子供といっていい年齢だった彼女らは、ティーンエイジャーを迎えたり、成人したりしている。

 本エピソードは、そうした取り残された、または新たに未来へと歩もうとする彼女らの物語である。副題が今回は「Fall in Love」であり、また「未来に恋する物語」として位置づけられている(1)。Loveを愛か、恋かとどのように取るかは解釈の余地が多分に残されているが、ここではその違いについて踏み込まない。

 本稿で、問いとしたいのは、そもそも「未来に恋する/を愛する」とはどういうことか、ということである。未来とは、一見時間が過ぎれば当然のごとく到来してくるものであるかのようでもある。しかし、現在を肯定し、積み重ねることは単純に未来を到来させ、「未来を愛する」ことに繋がるのだろうか。未来はいくつかの点から分析できるが、現在から予期される後のことであり、あるいは現在に接しながらも永遠に来たるべきものとしてとどまってもいる。

 ここでは、本エピソードのいくつかの話に触れつつこの問いにいくらかの方向性を与えたい。そのために、以下では二点に沿って考察を進める。第一に、本エピソードのおそらく最も核となるテーマである「決して溶けないもの」についてである。これまでもエピソードの重要な場面において主張されてきた「アイドルはアイドルじゃなくてもいい」が反復され、「決して溶けないもの」はその主張をより明確にしているように思われる。この考察を経て、第二に「未来を愛する」ことについて明らかにしていく。

 

1.決して溶けないもの、黄金。あるいはIn Memory of Louis

 本エピソードにおいて、「決して溶けないもの」または「黄金」と呼ばれるものを読み解くことは難しいわけではない。気づかれている方も多いだろうが、重要なことは大人、アイドル、未来といった多用されるフレーズを分節化することである。すなわち、社会に広く共有され規範として作動する時計時間的な概念と、諸個人の内在的な経験に働きかける生きられた時間に沿う概念とをである。便宜的に時計時間的なものを〈〉つきで、生きられた時間によるものを『』つきで表現しよう。

 このとき、あのフレーズは「『アイドル』は〈アイドル〉じゃなくてもいい」と理解できるだろう。『アイドル』であることは、〈アイドル〉のように資本主義システムの内で形成されたTVショーや雑誌、歌、ダンス、さらにはステージにのぼらなくてもいい。『アイドル』であることは、以下で明らかにしていく個人の経験の内で涵養される「決して溶けないもの」という信念を抱いてさえいればいいのだ。しかし、本稿で主題とすることはないが、この一つの語に二つの概念が重なられることによる緊張感、そして時計時間の圧力の強さは指摘しておいてもいいだろう。幸運にも時計時間と生きられた時間が重なるケースは存在する。〈アイドル〉であることがティーンエイジャーかせいぜい成人を越えたくらいが望ましいと共有されている社会において、その頃合いに信念をもって『アイドル』となれたものは非常に幸運である。しかし、そうではないケースもある。そうした社会において〈30歳〉をすぎても『アイドル』を目指すものは〈社会〉から白々しい目で見られてしまう。また逆のケースとして、女性や男性の〈アイドル〉をもっぱら性的な対象として暗に見てしまうようなところで、それを良しとして『アイドル』となるものは、もしかしたら疑わしく思われてしまうかもしれない。なお悪いことに概ねそうしたズレが生じるケースにおいては、否定的な諸観念を増長させてしまう。「30歳にもなってアイドルなんて」とスティグマ化したり、後者の例の成功はより客体化の傾向を強めてしまう可能性がある。しかし、ここにはもちろん意味を転覆させる可能性もある。それぞれの何らかの仕方での成功は、既に存在する〈アイドル〉の規範を転覆し、新たな規範を分岐させるかもしれない。そう、フーコーがクイアという概念を転覆させたように。

 ともあれ、話がそれたのでまず大まかな物語の流れを確認しておこう。本エピソードでは、「決して溶けないもの」というテーマが共有されつつもそれぞれのキャラクターの内で語られている。その中で、特に主要人物となるのが星柿マノンであり、また2034年から取り残されてしまった芹沢モモカ、晴海シンジュである。それぞれのキャラクターに焦点を当てていこう。

 まず星柿マノンについてである。彼女は17歳、高校二年生になりSOLのメンバーとなる。彼女はアイドルとして活動していく中で、また高校二年生という進路の分岐点にあって悩んでしまう。すなわち、SOLには2043年のアイドルブームの再来をつくった最早伝説と言ってもいい777☆Sのメンバーであったシンジュを間近にして彼女に憧れつつも、どうしようもなく自身の凡庸さを感じてしまう。マノンは、シンジュに社会の内でスターと見られる〈アイドル像〉を重ねてしまい、それに対して自分はあまりにもありふれていて、普通の女子高生で彼女には届かないと考える。また高校二年生の進路選択という契機にあって、アイドルになるのか、でもそれはあまりにも凡庸な自分にとっては信じられない話であり、社会が規範として要請する〈大人〉になったほうがいいのではないかと考える。

 そこで、象徴的に取り上げられるのが「魔法のステッキ」である。彼女は子供の頃から魔法少女に憧れており、その象徴としてステッキを自身を奮い立たせるおまじないの道具として持ち続けていた。しかし、そうしたステッキはどう考えても〈子供〉のおもちゃであり、立派な〈大人〉や〈アイドル〉になるには相応しくないと思い悩む。以下で論じるように、こうしたステッキは「決して溶けないもの」に対比されるように、心の奥底に箱に入れ、鍵をかけてしまいこまれてしまう。以上のように、マノンはかつて777☆Sのメンバーであったシンジュに〈アイドル〉の理想像を見出し、同時にそれに追いつけ追い越せと〈時間〉にせかされ、〈大人〉になろうともがく。そのために、象徴的な〈ステッキ〉を捨て去ろうとする。

 これらの解釈は彼女のいくつかの主張から読み取ることができる。

どうして

落ち着いてよ

魔法……魔法……お願い

ダメだ……こんなものに頼ってちゃ

本物の、アイドルみたいに――ッ!

第四話 帰らない魔法 

アイドルになれないのならせめて、大人にならなきゃ……ッ!

私は……大人にならないといけないの

第四話 帰らない魔法

だから……だから大人になろうと思った!!

アイドルとしての才能がないのなら

アイドルらしくなれないのならせめて、大人になろうと思ったの!!

なのに!未来はどんどん迫ってくる!毎日毎日、迫ってくるッ!

第六話 黄金の海

 次にモモカとシンジュについて見ていこう。777☆Sの他のメンバー、そして六咲コニー、もとい七咲ニコルがナナスタを去ってしまったにも関わらず、彼女らはナナスタに居残り、去ることはできなかった。モモカは去ってしまったコニーに対して「なぜ去ってしまったのか」と問うことができず、いつ彼女が帰ってきてもいいように事務所を彼女が去ったときと同じのままに固定し、彼女がかけていた眼鏡をかけることで〈マネージャー〉という役割を全うすることによって、過去を閉じ込めてしまった。

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第三話 遠い日の夏陰


 またシンジュは、コニーがナナスタを去った出来事に対して向き合うことができず、〈時間〉の変化に身を任せて、ただその出来事を過去の海へと埋めようとしていた。

私はきっと

怖かったんだ。

変わっていく世界、変わっていく自分、変わっていく私たちが。

だから、自分から変えようとした。

大切だったから、なくしたくなかったから、自分の胸の奥に仕舞って、鍵を閉めてしまった。

そんなことをしたって、失くなったものは戻らないのに

第五話 フォール・イン・ラブ

 以上のように、彼女らに共通する要素とは次の点である。過去に抱かれていた大事な思いを箱に閉じ込め、鍵をかけ、深く沈殿させる。そして、沈殿物を〈〉つきの要請に対する遂行によって、より深く過去の層へと閉じ込めようとするのである。

 こうした思いの閉じ込めに対して、転機となるのが度々繰り返されてきた「アイドルはアイドルでなくてもいい」という主張と、「決して溶けないもの」という信念形成である。この点において、マノンが主軸となっており、明示的に表れているので彼女の物語を進めていこう。

 ここで、重要な転機をもたらす人物の一人として、ナナスタにふらりと訪れた姫宮ソル、かつてセブンスシスターズで若王子ルイとして活躍していた人だった。彼女は、ステッキを捨て、ただただ立ちすくむマノンを連れ出し、話を始める。ルイはマノンから、大人になることかはどのようなことかと問われ、それに対して次のように答える。

そうだな

いくらでも綺麗事が言えるようになる、かな。

だから、もし君が望むなら

今ここで生きる意味だとか、人に優しくする理由だとか、実は不幸な自分の過去だとか――

君は一人じゃないよーだとか、いくらでも言えてしまう。

それが大人ってやつだ。

第五話 フォール・イン・ラブ

 しかし、当然これはマノンが望んでいた解答ではない。マノンが望むのは〈大人〉になることではなく、『大人』になることなのだ。それに呼応するかのように、ルイは次のように話を続ける。

 マノン、人はね――

『自分』から逃げることはできないんだよ。

たとえどんなに素晴らしい才能があっても、どんなにたくさんの経験を積み、大人になっても、失敗も、後悔も、寂しさも、きっとなくならない。

でも――

それが『君』なんだ。

それが君の人生なんだ。

嫌だったら逃げればいい。怖かったら隠れればいい。誰かのせいにして、自分に失望して

でも、どこまで行っても自分自身から逃げることはできない。

辛いだろ?辛いよな?

でも、そんな辛く険しい人生の中で

君が君のことを信じてあげなかったら、誰が君のことを信じてあげるんだい?

(中略)

もし、それが心の中にあるのなら

心の中の小さな部屋に、鍵をかけて大切に仕舞いこんだりしないで――

燃やすんだ。そいつを。何度も何度も。

それがいつか――

『決して溶けないもの』になる。

第五話 フォール・イン・ラブ

 「決して溶けないもの」を抱くことが『大人』になる鍵である。すなわち、マノンの〈子供〉のものとしていたステッキ、モモカやシンジュが吐露することが出来なかった過去の思い出は仕舞いこまれ、鍵をかけられるべきではない。むしろ求められるのは全く逆の実践である。それを取り出すだけではない。辛く険しい人生の中で、その大事なものをつねに燃やし続け、換言すればその状況に耐えうるかテストにかけ続けることによって、「決して溶けないもの」になる。社会において共有されている規範に基づく〈〉つきの要請に応え、何か大切なものを捨て去るのではなく、それらの中で生じる数々の出来事の中でその人の内に、その人だけに生じる大切な何かを作ろうとする過程、そして作り上げられたものこそ私たちは求めるべきなのである。

 ここで、作中に何度か挿入されたマノンの777☆Sの春日部ハルとの回想が接続される。ハルは、マノンに次のように伝えている。それこそが、「アイドルはアイドルじゃなくてもいい」である。

 

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第五話 フォール・イン・ラブ

 先に見たように「『アイドル』は、〈アイドル〉じゃなくてもいい」と読み替えられる。つまり、社会、そして資本主義に要請される〈アイドル〉になるのではなく、「決して溶けないもの」を持ち続けることこそが『アイドル』になることなのである。

 ここにきて、episode 4.0におけるアイドルとは誰を指すのかという議論に対して少し違った角度から迫ることが出来る。4.0では、誰かの背中をおすこと、それはただ〈アイドル〉だけがなせるものではなく、見ているファンを含めて、全ての人間が誰かの背中を押しており、その点において皆『アイドル』である。ここでは、異なった要件として「決して溶けないもの」を抱き続けているものが追加されることになるだろう。

 蛇足ながら、こうした一連の主張は私が好きなバンドの一つであるPoet-type.Mの「ダイヤモンドは傷つかない(In Memory of Louis)」という曲と重なる。少しだけ歌詞を引用しておこう。

「気にしないのは罪悪かい?

泣けない「悲しい」を恐れちゃ駄目さ。

そう君の君はずっと、もっと、素敵だよ、素敵だよ。」

想いを込めた沈黙は軽い言葉の歌詞じゃ傷つきやしない。

ありとあらゆる種類の「YES」はもう君の瞳に溢れるほどに。

Poet-type.Mの「A Place, Dark & Dark -ダイヤモンドは傷つかない- 第二章 夏 - EP」をApple Musicで

 「決して溶けないもの」を生み出すために燃やし続けることは、〈〉つきの社会の軽い言葉たちに惑わされてはならない。鍵を開けて、取り出し、そして肯定し続けることである。

 

2.未来を愛する?

 以上では、『』つきと〈〉つきの要請とを区別し、前者にコミットし続け、その過程で涵養される「決して溶けないもの」を抱き続けるものこそが〈アイドル〉であると明らかにした。ここでは、主題となる「未来を愛する」について見ていきたい。

 まず本エピソード内で「未来」に関わる主張をいくつか取り上げることから始めよう。まずマノンはこう述べる。

きっと、この時間は永遠じゃないんだんあーって。

だからこそ、精一杯、『今』を頑張るんだなーって。

だって、『今』を一生懸命やれなかったら

いっぱい傷ついたり、いっぱいしたりしなきゃ、ああ〔ルイのように〕はなれない。

今ある失敗も、後悔も、寂しさも、全部含めて『私』なんだって

第六話 黄金の海

〔〕内は筆者による補足

 またルイは最後の印象的かつ素晴らしいカットで次のように述べる。そこでは、黄金のように輝く夕暮れの海辺でモモカがルイに対してこれまでのコニーへの想いを独白しているときに、コニーがやってくるカットである。

そういう〔モモカがコニーへと抱いている〕大事な想いは

君が大切に育てたその想いは

『心の中の黄金』だから

だから自分の口で伝えたほうがいい

想いは消えない

燃え滾る熱い心の炎で燃やしたそれは

失敗も、後悔も、寂しさも飲み込んで

いつの日か

溶けることのない『黄金』になるんだ

来た、みたいだね――

――私たちの『黄金』

 

彼女はもう六咲コニーじゃない

私の知ってる七咲ニコルでもない

ただの人間で、ただの女の子だ

たくさんの過去とたくさんの未来を持った

たった一人の女の子

そして

いつまでも私たちの心の中にある『黄金』

さぁ、行っておいで

走れ、若者よ。未来へ

そしてまた、いつの日か

『君』はまた『君』になるんだ

ほら、また――

夢が始まるよ

第六話 黄金の海

〔〕内は筆者による補足

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第六話 黄金の海――やってくる彼女に駆け寄るモモカとシンジュ

 これまでの議論より、『今』を肯定することは「決して溶けないもの」または「心の中の黄金」を抱き続けようとすることであるとわかる。しかし、それは果たしてどのように「未来を愛する」ことへと繋がるのだろうか?

 ルイはやや比喩的に、未来を持ったかつてコニーやニコルであった彼女を迎い入れるために走りだりていくことを、「未来へ」と述べている。「未来へ」と向かうための条件として「決して溶けないもの」を持っていなければならない。

 ここで、鍵となるのはその後に続いて述べられる「そしてまた、いつの日か、『君』は『君』になるんだ」という主張である。「決して溶けないもの」を抱くことは『アイドル』であるための条件なだけではなく、社会に要請されるのではなく本来の『自分』になるための条件でもある。すなわち、これこそが『今』の肯定である。この主張を未来に接続するにあたって、上記でも少し触れたepisode 4.0におけるアイドル像を参照することが役立つ。

 私はその点について次のように解釈した。ハルの4.0の13話における長い独白において述べられた「自己を超えること」、そして「あなたは私のアイドルです」という主張が要点となっていた。この時、私たちはつねに誰かの先を行くものであり、同時にその先を追うものでもある。追いついてたどり着いては、また先に行くものを見る。そして、また追いつくために自分の足で前へと歩きださなければならない。ここに一つ「未来」のようなものを見出せる。私たちの先を行くものたちこそが「未来」なのだ。先に行くものは必ずしも他者でなくてもいいが、より重要な点がある。

 それは先を行くものは「決して溶けないもの」を持っており、そのことによってその人を信じなければならない点である。先を行くものを信じることは、同時に後を追う自分自身が「決して溶けないもの」によって、その未来まで歩いて行けるであろう自分自身を信じることでもある。そして、同時に今ここに「決して溶けないもの」を抱いてたどり着けた自分自身を信じ、肯定することでもあるのだ。

 この時、「決して溶けないもの」を持って『今』を肯定することが、どのようにして未来へと接続されるかがわかる。今の自分を肯定することは、二重の取り組みである。第一に、この今信じている「決して溶けないもの」は、過去の私から見た未来の私が持っているものである。第二に、今から見て未来へと歩き出せる可能性を持つ自分自身を信じることでもある。すなわち、「未来を愛する」とは「過去からみた未来」と「今から見た未来」を内包する『今』を信じ、肯定することと言えるだろう(2)。

 こうした解釈を下支えしてくれるかもしれない印象的な主張をシラユキがマノンに対してしている。

知ってっが?

オラが標準語覚えだのも、マーちゃんと同じ学校さは行ったのも!!

マーちゃんみてぇになりたがったがらやったんだッ!!

オラの憧れの女の子のこと――

それ以上、馬鹿にすんなッ!!

第六話 黄金の海

 シラユキにとって、マノンは未来の自分なのだ。それは、マノンにとってのシンジュやルイもそうである。

 ルイが述べる「『君』は『君』になる」とは、「決して溶けないもの」を持って未来のどこかで自分自身を作りかえること、絶え間なき未来への生成変化なのだろう。未来を愛そう。今ここにいる私を信じ、肯定しよう。私は今ここまで歩いてきた。そして、またきっと歩いて行ける。

 

3.おわりに

 以上では、何度も繰り返される「アイドルはアイドルじゃなくてもいい」という主張を本エピソードの主要なテーマである「決して溶けないもの」に沿って解釈し、またそれをもって全体のテーマとなっている「未来を愛する」ことについて読み解いてきた。

 Episode 5.0には後を追う者たちがどうするべきかというのが色濃く表れている。この時、私は大胆にも以下のような図式を示したい。

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 Episode 5.0の彼女らはたしかに後を追うものだがここには三つの岐路を設定できる。第一の岐路についてである。印象的にもルイは「決して溶けないもの」を持つためには、「燃え滾る熱い心の炎で燃や」すことが必要であると述べる。この「燃やす」という表現を大袈裟に捉える必要はないかもしれないが、あえてそうしてみよう。すなわち、「決して溶けないもの」を生み出すために燃やし続けて、すべてが灰となってしまうAXiSへの道を。そして第二の岐路として、777☆Sだ。最も幸運な形態だろうか、しかし、彼女らは去ってしまった。この解釈はまだ開かれたままとなっている。そして、第三の岐路がセブンスシスターズである。奇しくも、Episode 0.7のテーマが「溶けてしまうほどの愛」である。ここで提起された愛の形態とは「決して溶けないもの」への信であるにもかかわらず、そうではない愛の形態とはどのようになるのだろうか。強い想いを見つけられたことは幸運かもしれないが、それがあまりに強すぎたとき、たどる顛末はすでに読んだ人ならばご存知だろう。

 私が次に向かう道はこれだ。Episode 0.7へと戻らなければならない。彼女らが知る「愛」と5.0で描かれたものと距離を見極めねばならない。

 

 

(1)3ページ目:『Tokyo 7th シスターズ(ナナシス)』茂木伸太郎インタビュー|0.7、5.0を振り返る | アニメイトタイムズ

(2)全く余談ながら、「過去から見た未来」という語はラインハルト・コゼレックのFutures Pastから知った。

2019年よかった音楽

 おばんです。

 インターネットを眺めているとみなさんちらほらと2019年ベストアルバムなんて選出し始めているので、えいやととりあえず選んでみた。思えば、四半期ごとにやるつもりだったものの第一クォーターのみやって終わってしまっていた。

 先日Twitterで、音楽の良さについて論評する際にはその客観的な良さと主観的な良さとの距離をある程度は保つべきだ、というものを見かけたが音楽について私はそういうことができない。ここに選んだものは、ほとんどがあの時に聞いていたということを明瞭に思い出せるものが多い。個人的な良さの尺度として思っているのは日常のどのようなシーンで聞き続けてもきっと耐久性のありそうなものである。本、漫画やアニメならばどこがどう良かったのかを論じることはできるものの、音楽についてはいかんせん口下手になり良かったとしか出てこないのが困りもの。

 それを加味してもらいつつ寛恕してもらいつつ、おおざっぱにコメントをつけていく。

 

Little Electric Chicken Heart

Little Electric Chicken Heart

  • Ana Frango Elétrico
  • ロック
  • ¥917

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 ジャケットだけを見ると暗そうだな、男性ボーカルなのかなと思って聞き始めるとそうでもない。そのややピンボケしたジャケットのように温かみのある女性ボーカル曲。秋の晴れた日に聞きながら散歩したくなる。

 

Mínimas

Mínimas

  • Así
  • ラテン
  • ¥1528

music.apple.com

 去年もアルバムをリリースしているがそれより断然良かった。どうでもいいことにアーティスト名の"í"と"i"は違うため、正しい発音はよくしらない。前作も他のアーティストとフィーチャリングしている曲が多かったが今作も多くある。それがいい。とりたててランキング形式にしないものの、仮にしたとき今年良かったもののなかでも上位に入れそう。

 

El Guardián

El Guardián

  • Gonza Di Muro
  • ラテン
  • ¥1528

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 私が音楽を探す方法なんて限られており、定まったやり方としてあるディスクユニオンブラジルラテンのTwitterを見るなかで見つけたもの。今作で初めて知った。前作までは非常にジャズ色が強かったものの、そのジャズらしさを残しつつギターを前景化させている点が好みにあった。

 

Besos en la Espalda

Besos en la Espalda

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 今年はひそかにスペイン語ポップというジャンルをがんばって探すぞと思っていた。しかし、夏が終わり気づけば探すことを怠ってしまっていた。去年リリースされたBandalos Chinosが非常に良く、それに続く形で今年のスペイン語ポップで一番好き。しかし、apple musicの「スペイン語ポップ」という曖昧なジャンル付けはなんなんだろうか。

 

Mood Swings (Volume One)

Mood Swings (Volume One)

  • Jerome Thomas
  • R&B/ソウル
  • ¥917

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 この曲について記憶を探した時出てきたのは、今年の9月末まで塾のバイトに通っていた八王子の風景だ。18時前の暗くなりかけた八王子駅の北口を歩く、そんな風景が思い出される。そういえば、塾のバイトは5年ないくらいやったために、八王子にもやはり5年くらい足を運んだが一度たりとも南口に出たことはなかった。

 あとこれを書きながら、アルバムのタイトルに"Volume One"とついているが"Volume Two"の存在を知らないことに気づく。

 

https://music.apple.com/jp/album/35-mm/1464768714?at=10l8JW&ct=hatenablogmusic.apple.com

 なぜかはてなブログのリンクの埋め込みに失敗してしまっているが、Juan Fermín Ferrarisの35 Mm。ジャズは好きなもののそれでも唄が入っているほうが好きだが、これは唄なし。一曲目で、子供の陽気な声と楽曲が織り込まれており、それがすんなりとアルバムに導いてくれる。


Diverso Mundo

Diverso Mundo

  • Juan Miguel Carotenuto
  • フォーク・ロック
  • ¥1528

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 Juan Fermín Ferrarisのメンバーか何からしいという情報を見た気がする人のアルバム。こちらは唄もの。シンプルに良くて飽きずに聞いていられる。

 

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 これはたしかinstagramでAntonio Loureiroか誰かが勧めていて、へえと思って聞いたアルバム。総局数が19曲だがインタールード的なものも多く見た目に反して負担は全く感じられない。こう楽曲数が多いものは途中ではっとしてアルバムから途中覚醒し飽きてしまうものが多い。しかし、これにそうした瞬間はない。

 

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 前作のTwo Windowsがダークだった記憶があるものの今作は明るい。Lali Punaいいよね。

 

Nacer en Marte

Nacer en Marte

  • Lidia Damunt
  • ポップ
  • ¥1528

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 ジャケットのパンチがすごい。銀塗りってなんだかわからない。基本的にはアコースティックな構成に時々シンセが入ってくるくらいで、ジャケットほどのパンチがあるわけではない。ただしゃくりが少し特徴的で戸川純を思い出す。

 

https://music.apple.com/jp/album/2019/1480715497?at=10l8JW&ct=hatenablogmusic.apple.com

 これもまたなぜかリンクの埋め込みに失敗しているが、Lucy Dacusの2019というアルバム。彼女は今年は一か月に一曲ずつリリースしており、それをまとめたのが本作となっている。そのためアルバムとしてのまとまりは弱いがそれぞれの曲は良い。しかし、前作のHistorianがあんまりにも良かったし、それを越せてないものの、Lucy Dacusのファンになってしまったので選んでしまった。アルバムのラスト曲が"Last Christmas"で、それが私が抱く彼女の印象とかけ離れてしまっていて笑ってしまう。ギターで引っ張るLast Christmasは爽快。

 

Déjà-Vu

Déjà-Vu

  • Metrô
  • ブラジル
  • ¥1528

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 1曲目から聞くとただのフォークロアかなと思っていたが、2曲目からはシンセが加わりフォークロアとシンセポップらしさが良い感じに調和してて好きなアルバム。

 

The Return

The Return

  • Sampa The Great
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥1528

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 かっこいい。ただ長い。聞き終わると達成感がある。

 

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 こういう女性SSWが大好きです。Lucy Dacus然り。先日リリースしていた3曲入りシングルも良かった。

 

Thina

Thina

  • Seba Kaapstad
  • ネオ・ソウル
  • ¥1528

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 いいネオソウル。

 

forevher

forevher

  • Shura
  • インディ・ポップ
  • ¥1528

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 やっぱりこれもわかりやすくSASAMI、Lucy Dacus同様ですね。

 

So!YoON!

So!YoON!

  • So!YoON!
  • R&B/ソウル
  • ¥1375

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 何よりジャケットのインパクトが強い。謎の生物。さわやかなソウルですね。夏前にランニングしながら聞いた。

 

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 浮遊間のある男性ボーカルと楽曲のミステリアスさは深夜にぴったり。

 

¿Dónde Bailarán las Niñas?

¿Dónde Bailarán las Niñas?

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 スペイン語ポップ探そう活動の一環。謎のくくりではあるもののスペイン語ポップであるとなんとなくわかる。

 

expensive magnets - EP

expensive magnets - EP

  • expensive magnets
  • ジャズ
  • ¥1528

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 私が音楽を探す次のやり方はBandcamp Dailyをちまちま見ることである。ジャズというジャンル付けになっているけど、よくわからない。ぼやっとした音像が心地よいミニアルバム。

 

Yate

Yate

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 スペイン語ポップを探す中でありがたいことに、TBSラジオの「ジェーン・スー生活は踊る」の毎週金曜日に行われている洋楽コラムの中で紹介してくれていた。スペイン語ポップは夏に良い。暑い日には暑い国の音楽を聞くべきなのである。

 

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 いまいちどう発見したのか思い出せない二枚組アルバム。軽快なエレクトロで気分が良くなる。

 

LEGACY! LEGACY!

LEGACY! LEGACY!

  • Jamila Woods
  • R&B/ソウル
  • ¥1528

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 今年ソウルのなかでもそれなりに繰り返し聞いた。それも当然でリリースされたのが5月頃だからである。でも、良いよね。

 

Starts Again

Starts Again

  • Tawiah
  • ソウル
  • ¥1375

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 唄で引っ張るシンプルでかっこいい。

 

https://music.apple.com/jp/album/1958/1473416234?at=10l8JW&ct=hatenablogmusic.apple.com

 三度目の埋め込みの失敗。Blick Bassyの1958。2曲目がものすごく好きでただそれだけ。

 

Vox

Vox

  • Pedro Martins
  • ジャズ
  • ¥2037

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 Pedro Martinsのギターのうまさにいつもびっくりする。アルバムとしては、安定感、安心感があっていつ聞いても、うん、良いよねとなる。

 

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 "This Is How You Smile"というタイトルとジャケットの陽気さを裏切らないような温かさ。

 

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 このアルバムについて記憶をたどったとき、あるのは雨の帰り道。駅から帰ろうとしたらいい具合に雨が降っていて、自転車を引きながら歩いて帰ったのを思い出す。

 Rough Trade Sessionとかいうミニアルバムも出しててこちらもいいですね。

 

THE FOG - EP

THE FOG - EP

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 去年リリースされたお湯の中のナイフも最高だったが、これも非常に良い。家にレコードプレーヤーがないけど、どうせダウンロードコードついてるでしょって思いながらLP版を買ったらなくて少し焦り、apple musicを確認したらリリースされてて一安心した思い出。12月18日にでる家主のアルバムも楽しみ。

 

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 先日、People In The Boxの波多野氏との対談で名前を知って聞いてみて、あんまりにも良くてものすごくショックを受けた。日本のバンド探しを半ば怠ってしまっていたが、こんなにもいいバンドを見落としてしまっていた自分にショックだった。

 聞いて街をぶらつくと解像度のあがった街並みが見えた気になった。

 

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 思えば2019年の始まりはこれだった気がする。MoYuRuを聞いてから合唱コーラスがいたく心に響いたのか他の曲でもそういうものを聞くたびに少し涙してた。門田氏によればガンダムUCイメージらしい。イプシロンは泣いていたよのダサカッコよさ、瓦礫のオルフェオの退廃性、どれも最高です。

 夏ごろに唐突にリリースされた過去曲をアレンジした「Lost Verse(s)」もかっこよかった。Analyseをこんな風に聞き直すなんて。

 

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 締めはこれでいいでしょう。

 Kodomo Rengouを咀嚼しきれていないなかでの今作。2121から懐胎した犬のブルースは最高。

 先日公開された「音楽と人」でのインタビューを読んでまた聞き直したいところ。

音楽と生活をめぐる旅。香川県へ移住したPeople In The Box波多野裕文を訪ねて | 音楽と人.com

 

 12月はまだ3週間ほど残っているし、とりあえずの気持ちでえいやと選んだのでまだ見落としてあるので追加するかもしれない。

 ただすでに一回選んだことに満足してしまってやらない見込みのほうがきっと高いだろう。

 

Episode 4.0 AXiSによせて

 おばんです。

 以下は、タイトルの通りTokyo 7th SistersのEpisode 4.0 AXiSが無事完結したことに寄せてのただの覚書です。

 本エピソードは、総監督である茂木氏が語るようにナナシスという大きな物語である全体の起承転結のうち転にあたるものである。これまでエピソードと比べても気合の入りようは格段に違う。全13話構成であり、最終話である13話は60分と大ボリュームとなっている。さらに演出において、今までは使いまわしの背景に対して、キャラクター絵をはめ込んでいたが、アニメーション演出をふんだんに盛り込んでいる。またこれまでの主要となるエピソードを象徴するリードトラックが存在していたが、今回もまたある。後述するようにAXiSのHeaven's Rave、COCYTUSであり、また13話のEDである777☆SistersのNATSUKAGE -夏陰-である。

 本エピソードの大筋は以下となる。かつてアイドル界を席巻したセブンスシスターズのそれぞれのキャラクターと同じ声を持つAXiSが登場。彼女らの目論見はアイドルとそれらにまつわる世界を滅ぼすことであり、そのために777☆Sistersに勝負をけしかける。エピソードの後半につれて明らかになるように、この勝負の行方に何を彼女らは見出すのだろうか、というのが問いとなっている。

 この覚書には多くのネタバレを含む。まだ全てのエピソードを読み終えていない諸君は回れ右だ。はやく読みたまえ。

 一応、覚書といえども目的を設定しておこう。二点になる。一点目として、AXiSが提出した問いに対して、777☆Sistersのみながどのように応答したのか、を確認することであり、二点目としてその応答を吟味することである。

 

 1.翼・灰・exit

 まず本節のタイトルを明かす前にAXiSの主張を確認しよう。メンバーは6人いるものの、中心的人物である天神ネロの主張を見れば、それはほとんどAXiSの主張として受け取れる。天神の来歴は次である。彼女には、アイドルを目指した姉がいた。しかし、姉はセブンスシスターズに及ぶわけでもなく、ただアイドルとして成功できるわけでもなかった。さらに悪いことにセブンスと同じ声を持つ天神の存在によって同時に、精神を病んでいき、ほとんど寝たきりになってしまう。天神の主張の枢要の一つはここにある。「セブンスの呪い」、それは第一に一世を風靡したにも関わらず突如解散したことによりファンたちを裏切り、彼ら彼女らに大きなアイドルに対する不信感を植え付けたことであり、第二にセブンスは「皆の手を引く、元気に、笑顔にする」と言っているにも関わらず、ファンを裏切った、のみならず知らず知らずのうちに天神の姉ように敵を生み出し、蹴落としていった。セブンスの行為とは裏腹に存在し、禍根として持続する欺瞞や裏切りである「呪い」を、むしろこの「呪い」を利用することによって打ち砕くことがAXiSの狙いである。彼女らの矛先は、ただアイドルのみに向かうわけではなく、ファンなどアイドルまつわるもの全てに向かう。AXiSの他のキャラクター像に象徴するように、ただファンはアイドルを性的に消費したり、囲いとなったり、すぐに移ろっていってしまう。AXiSは、こうしたファン、産業などを含めたアイドルにまつわるもの全てが消し去られることを狙う。

 天神はセブンスの後継となった777☆Sistersのうちに同様の欺瞞を見出す。特に777☆Sistersの主人公といってもいい春日部ハルはこの問いに執拗にさらされる。春日部は「ただ誰かを笑顔にしたくて、背中を押したくて、そして光になりたくて」、アイドルをやっていたにも関わらず、その行為が天神の姉のように敵を生み出し、そして蹴落としていってしまったのではないか、真逆のことを結果として生み出してしまったのではないか、と懐疑に陥ってしまう。

 AXiSは以上の狙いのために、777☆Sistersにライブで負ければどちらかが解散という、勝負をしかける。AXiSが勝って777☆Sistersが解散し、その上で自分たちも解散。あるいは777☆Sistersが勝って、AXiSが解散することになったとしても、天神が自殺を企図することによってファンに衝撃をもたらす。どちらに転んでも、アイドルは消滅し、二度とアイドルなど生まれないようにする。これが大筋となっている。

 天神の主張やAXiSの唄ではこうした狙いを裏付けするように印象的なものが多い。例えば、天神は多くの箇所で「灰にしちゃるけん」という。さらに天神は最終話で自殺を企図する際に、象徴的に姉に語りかけるように「翼があったらよかったのにな」という。またHeaven's Raveの歌詞には、「連れてってあげるよ天国へ まだまだ騒ぎ足りないの 現実捨ててこれたなら その目を見つめてあげるよ」とある。灰、翼、天国といった象徴的な言葉はAXiSの主張を非常にわかりやすく表している。今ここにある世界―アイドルにまつわる世界―を燃やし尽くして灰にすること、そして翼によって天国あるいはこの世界ではない外部への脱出 Exit である。

 蛇足ながら、AXiSの主張を目にしたときに私自身、非常に驚いた。これは近年日本でも取り上げられ注目されている加速主義の主張に酷似するからである。加速主義の立場は様々なものがあるが、特に最もラディカルであるニック・ランドの思想とAXiSは符合する。ランドは、現在の資本主義の力を解放し、徹底的かつ破壊的に推し進めることによってこの世界からの脱出Exitを目指す。資本主義=アイドルの力、呪いによる推進こそが天国へと繋がるのだ。

 

 2.歩くこと・今ここ・自己信頼

 前節でAXiSの主張について確認できた。私たちはここでこの覚書の目的の一つである応答について確認できる。

 春日部の12話や最終話における台詞から読み取ることができる。

ねぇみんな、聞いて。

もうすぐAXiSとの戦いの日が来るね。

私たちは勝てないかもしれない。

解散してしまうかもしれない。

消えてなくなってしまうかもしれない。

戦わなくたって、誰も文句は言わないと思う。

だけど、それでも私たちは、ここまで歩いてきた。

自分の足でここまで歩いてきた。

勝ちたかったから?違うよ。

私は、私を超えたかったから歩いたんだ。

なんでこれをするのか、なんのためにここにいるのか、そういうことから逃げたくなかったから、歩いたんだ。

そうやって歩いて、私は今、ここにいる。

私はもう逃げない。目を背けない。戦うよ。

勝つためじゃない。負けるためでもない。

自分に嘘をつかないために戦うんだ。

もし負けて解散するとしても、私は後悔しない。

解散するから、なんだっていうの?

そんなことで、私たちのやってきたことは、歩いてきた道のりは、消えない。

アイドルは消えないんだ。

Episode 4.0 AXiS 12話より

自分の足で――”青空”(ここ)まで、歩いてきた!!

Episode 4.0 AXiS 13話より

まず、はじめに私はみなさんのことを、よく知りません。

それに、きっと気の利いたことも、誰かを救うような言葉も言えないから、自分のことを、私たちのことを、話そうと思います。

私たち、歌や踊り、たくさん練習しました。今までたくさん負けちゃいそうなときも、折れちゃいそうなときもいっぱいあった。みんなもそうでしょ?

負けそうなとき、苦しいとき、悲しいとき、ひとりだって感じて、自分が何でここにいるのか、どうして生まれてきたのか、わからなくなる、そんなときが。

同じだね、同じなのに、ごめんね。

私には、『あなたはひとりじゃない』なんて言えない。

私たちは他人だもん。

私は、あなたじゃないもん。

あなたはひとりぼっちかもしれない。

あなたの過去は、やりなおせないかもしれない。

あなたの未来は変えられないかもしれない。

でも、いつか、そう思う日がきたら思い出してください。今日、あなたがここにいたこと、あなたが、私の背中をおしたこと。

だから、あなたは、私のアイドルです。

ありがとう、あなたがここにいてくれてよかった。

 Episode 4.0 AXiS 13話より

  読んでわかるように、AXiSとのコントラストである。AXiSが主張する灰、外部への脱出、天国へ、ではない。777☆Sistersがアイドルとして目指すことは、翼によって羽ばたいていくことではなく、「歩いて」、そして「今ここ」にたどり着いたことそのもの、軌跡、自分の足を信じることである。

 こうした主張は、ラルフ・ワルド・エマソンを思い起こす。エマソンが主張する自己信頼や円に関する議論はこの応答と符合する。エマソンによれば、自己信頼とは、社会に何らかの形で迎合することではなく、自己の奥深くにあるものを発掘し、そして信頼することである。そして、円については、その信頼した地点は一つの円となり、一つの完成となる。だがその描かれた円はそれで完成して終わるのではなく、その外にまた円を描けるのだ、とエマソンは主張する。

 エマソンの思想は、ニーチェが述べるような超人とはやや異なる。自己信頼は、自分自身一人での精進ではなく、他者関係である。私たちの今ここまで歩いてきた道のりは一つの到達点だが、その先を行くものたちがいる。私たちは先を行くものたちを見ては、また新しい円を描くことができる。先を行く他者を信じることは、たどり着くだろう自分を信じることであり、やはり今ここにたどり着いている自分を信じることでもある。

 ここで、春日部の述べる「自己を超えること」、そして「あなたはアイドルです」という主張を理解できるようになる。すなわち、私たちは誰かの先を行くものであり、同時にその先を追うものでもある。追いついてたどり着いては、また先に行くものを見る。そして追い越すために歩き出していかなくてはならないのだ。そうした意味で、先を行く他者がアイドルであり、自身も先を行くものとしてアイドルなのである。

 

 3.おわりに

 だからといって、どちらの道を取るにしても容易なわけではない。

 AXiSの道の険しさは、最終話のライブ時の蓬莱タキによく表れている。彼女は、脱出への恐怖に怯え、失敗してしまう。天国へと至る階段を登れる人間は多くはない。自己を否定する力、死への欲動の肯定という倒錯性を貫ける人間は果たしてどれだけいるのだろうか。

 だからといって、777☆Sistersが選んだ道も優しいわけではない。私たちはたしかに「今ここ」にいるかもしれない。しかし、ここまで歩んできた道は見えているだろうか、途切れ途切れではないだろうか。そして途切れていたとしても、歩んできたんだ、というその身体の感覚、記憶があればいいというかもしれない。しかし、私たちはその感覚や記憶をどこまで保っていられるのか。今や疲弊し、消尽しかかっている。そして、先を行くものたちの光が見えるか。あるいは先を行くものたちの真っ直ぐな光は強すぎて逆光で前が見えなくなっていないか。

 最も不幸なのは、この二つの道の手前で立ちすくんでしまう人々である。倒錯性を貫くほどの勇気もなく、今ここを信じるだけの他者関係も何もない人間はどうするべきなのか。777☆Sistersの道の厳しさの一つは、世界や他者との紐帯である信が途切れてしまっているにも関わらず、その信をどうにか再建しなければならないことである。

 最終話の天神の台詞は印象的である。

偶像やない、こいつは、人間ばい。

Episode 4.0 AXiS 13話より

 他にもこうした台詞は多く見受けられる。私たちは、人間であり、生きていくのだ、と。

 しかし、私にはアイドルを人間にしてしまうことは最も厳しい道を選んでしまったようにしか思えない。アイドルを人間としてしまうことは、全ての人間をAXiSか777☆Sistersか、という岐路に立たせてしまう。そこに逃げ場はない。だって私たちは人間になってしまったのだから、そしてそれはアイドルなのだから。

 そして、比嘉アグリのつぶやきは最も重い問いとなり、またAXiSが投げかけてきた最初の問いにつねに舞い戻らされてしまう。

こういう風にしか世界を愛せなかった人もいるの

Episode 4.0 AXiS 13話より

  私たちは彼岸の他者をアイドルと見なせるか、そしてその他者のアイドルとなれるのだろうか。

Tokyo 7th シスターズ声優のラジオ

 なんとなくTokyo 7th シスターズの声優の方のラジオをまとめてみました。とりあえず、アニメタイアップではないラジオです。

 あと掲載している方は、7/20に行われた武道館ライブに出演された方をまとめました。気が乗ったら今後足すかもしれない。漏れがあったらごめんなさい。

 

・篠田みなみ

anitama.com

agonp.jp

 

高田憂希

twitter.com

 

加隈亜衣

ch.nicovideo.jp

 

・中島唯

ch.nicovideo.jp

 

井澤詩織

www.c-channel.secondshot.jp

twitter.com

twitter.com

 

清水彩香

www.onsen.ag

 

道井悠

ch.nicovideo.jp

 

今井麻夏

なし

 

大西沙織

加隈亜衣と同じくキャン丁目キャン番地

www.onsen.ag

www.animatetimes.com

ただしこれは現在休止中

www.joqr.co.jp

 

・中村桜

清水彩香と同じく清桜

vstation.net

 

・高井舞香

ラジオなし。以下twitter

twitter.com

 

桑原由気

anitama.com

 

・吉井彩実

ラジオなし。以下ブログ

ameblo.jp

 

植田ひかる

ラジオなし。以下twitter

twitter.com

 

藤田茜

www.onsen.ag

ch.nicovideo.jp

 鷲崎健と8月から放送開始予定

www.onsen.ag

下地紫野との限定配信

 

広瀬ゆうき

ラジオなし。以下twitter

twitter.com

 

山本彩乃

ラジオなし。以下twitter

twitter.com

 

・野村麻衣子

ラジオなし。以下twitterおよびinstagram

twitter.com

www.instagram.com

 

巽悠衣子

seaside-c.jp

ch.nicovideo.jp

 

山崎エリイ

freshlive.tv

 何やらパーソナリティを担当するようです

 

田中美海

ch.nicovideo.jp

音泉プレミアムに関する忘備録

 久しぶりにブログ書きます。

 内容はただタイトルの通り音泉プレミアムに関する忘備録。

 

 こんなことを書こうとした経緯として、今年の1/26に声優の藤田茜さんが誕生日をむかえられ、それを記念に藤田茜生誕25周年記念番組と題して「藤田茜シーズン1」という一人しゃべりラジオが、音泉プレミアムで始まった。

 ここで、藤田茜のためだけに、音泉プレミアムに入るか!?と思いつつ、音泉プレミアムについて調べるも大した情報がわからず結局足踏みして、前回配信にてWUGの吉岡茉祐さんがゲストに来たということもあり、勢いで登録した。

 プレミアムに関する大まかな内容はこちらをご覧ください(

アプリ・プレミアムコンテンツ | インターネットラジオステーション<音泉>)。

 ここでは、足踏みしてしまって、勢いで登録する際にわかったこと、そして改善してほしいなと思うことだけ書きます。

 まず足踏みした最大の理由としては、月額がいくらか全くわからなかったこと。この点については、アプリで会員登録し、プレミアムコンテンツにさらに登録しようとするときにわかる。

 で、具体的に月額550円。なお登録してから二週間の無料トライアル期間がある。そのトライアル期間終了後キャンセルしない限りは、おそらく自動的に月額コースに入る。

 最大の理由と書いてしまって、他に理由があったのかと自問したがなかったので、改善を望む点として何点か。

 一点目として、プレミアムコンテンツをパソコンでも聞けるようにしてほしい。現状プレミアム会員は、アプリで通常会員になり、さらにプレミアム会員になるという形でしか登録されていないため、原理上アプリを介さないパソコンのブラウザのやつでは聞けない。

 私はネットラジオを家にいるときにパソコンでしか聞かないので正直困る。

 あと藤田茜さんの番組は映像配信なので、正直スマートフォンの画面サイズでは少々不満がある、というところ。

 二点目として、アーカイブ配信が過去三回というのは少ないのでは?という気持ち。この点については、他と比較したことがないのでなんとも言えないが、アーカイブ配信は過去五回くらいまでにしてくれると嬉しい。

 

 以上が、音泉プレミアムの制度について登録する前後について思ったことでした。

 藤田茜好きだけど、隔週配信しかしないのに月額550円って少し高くないか?という気持ちはなくなはないですが、なぜか映像配信だし、1時間くらいしゃべって、自由にやってるので良いです。あと、他のプレミアム会員専用の番組として、「高橋李依上田麗奈 仕事で会えないからラジオ始めました」とかは面白くて良いです。映像配信ではないけれど。

 最後に、プレミアム会員に登録すれば、一回目はいつでも聞けるものの、前述の通りアーカイブ配信は過去三回目までです。藤田茜シーズン1は、現在5回目まで配信中。ということは、第二回が聞けるのはあと少しなので、入るなら今からかもしれません。

 予告だけアプリから見れるのでよろしければ是非というお話でした。

藤田茜シーズン1 | インターネットラジオステーション<音泉>